レッスンのハジマリ

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「……芳野は料理が上手いんだな。」 食卓に並んだ夕飯を見て、部長が声をあげたのを見て見えないところでガッツポーズをした。 ─…この同棲を機に、しっかり胃袋を掴んでやろう。私無しでは生きられないダメ男に成り下がればいいんだ、、。 ポテトサラダと、コンソメスープ、、メインのお肉のステーキに合わせた赤ワイン。グラスを合わせて乾杯をした後、夕食タイムがスタートする。 「芳野は基本、自炊してるのか?」 食べ方が綺麗だなぁ…と見惚れているところに飛んできた質問。 「ウチ、父子家庭で…学生の頃に両親が離婚してからずっと食事は私の担当だったので。基本的な料理は身についている方だと思います」 お肉を口に放り込んで、その美味しさに悶えながらワインを飲んで幸せな気持ちでいっぱいになっている私を見て、部長は少し気まずそうに微笑む 「……あ、でも。元カレに料理研究家の人が居たんですけど…彼が同じクオリティのものを作れるようにならないと別れる、とか言ってきて。必死で彼の料理教室に通ったことがあります。」 私のその発言により、穏やかだった食卓の空気が急に凍りついたような気がした。
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