出会いとハジマリ

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出会いとハジマリ

4月…この春から晴れて社会人として企業に務めることになった私は、入社式なるものに参加するべく朝早くからスーツを着て時間に余裕を持って家を出た。 最寄り駅から電車で二駅のところで降りて、そこから徒歩で5分も歩けば着く会社に…なかなかたどり着くことが出来ず。現状…遅延してしまった電車の中で間に合うか間に合わないかという、窮地に立たされている。 (こんな日に限って、人身事故なんて……) 一つ前の車両が事故を起こしたらしく、動き出す気配がない電車。そこそこ人が多い車内で一人、この電車に乗り合わせてしまったことを悔やんだ 電車の中で電話をするのはマナーとしてどうかと思う。でも遅刻するという連絡は入れた方がいいような気もする。とはいえ、会社の人間の連絡先なんて採用してくれた人事担当の人のメールアドレスしか知らない。 一つ先の駅で降ろされ、その後の電車の運休は見合わせるというアナウンスを聞きながら…もう既に始まってしまっている入社式のことを考えると不安で堪らなくなり…涙が溢れた。 (……最悪だ、もう帰りたい。)
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