レッスンのハジマリ

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「……今のは、冗談?」 手を止めて、私をジッと見据える部長。何かマズいことでも言ったかな…と首を傾げると、盛大なため息が返ってきた。 「………世間知らずが過ぎる」 頭を抱えながらワインを口にした部長。その言葉が何を指しているのかは聞くまでもない。 「別れ際に…私と付き合ってたのは月謝を払ってくれるから、その見返りに抱いてやってただけだって言われて。その時初めて自分が遊ばれてたことに気付いて…」 「男の方に問題があるのは言うまでもないが…芳野も相当見る目がないな」 「………よく、言われます」 呆れたような表情を浮かべながらも、私の作った料理を全て完食してくれる部長は…優しい。 「世間知らずで無能なお前が少しでもまともな人生を送れるように…俺が生き方を教えてやる」 悪酔いする前に切り上げよう、と言ってワインを片付けてしまった部長。私も慌てて夕飯を口の中に放り込み、グラスに残っていたワインで流し込むようにして食事を終えた。 部長がお風呂に入っている間に、今日学びたいことを決めて用意しておくように…と言われたので、とりあえず自分のノートパソコンと先日部長にお借りした本を数冊用意してリビングで部長が戻るのを待つことにした。
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