レッスンのハジマリ

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部長にはブラック珈琲を、私はミルクティーを用意して…今日買ったばかりのマグカップに注いでみた。 「……うん、やっぱりピンクと水色が良かった」 モノトーンな色合いは、この家の家具や部長の雰囲気には合っているとは思うが…これでは会社で出される珈琲と同じ扱いのような気がして、少しガッカリした。 「芳野、今日の課題は何にするか決めたか?」 リビングに顔を出した部長が、タオルで髪を乾かしながら近付いてきて…あまりの色気にまた目眩がした。 「……芳野?」 「あっ…今日はワードの初歩的な使い方をもう一度、一から学びたいなぁ…と、、」 「いい心掛けだな…早速、始めよう」 テレビの前にあるローテーブルへと移動し、隣同士で座る。それだけで緊張して心臓が暴れだしている私をよそに…隣にいる部長は至って普通で勝手にパソコンを操作し始める。 ……あれ?これって残業? っと思うほど、場所が違うというだけですっかり仕事モードの折原部長。甘い雰囲気なんてものは1ミリもなく、、 「…まず、ヘッダーにタイトルを入れてから、」 「部長…ヘッダーって何処にありましたっけ?」 「……ここ。っで、この時同時にフッターを」 「い、一緒に?!同時進行はまだ難しいです!」 「……お前、今までどうやって書類を作成してたんだ?逆に聞いてみたいもんだな。」 そんな個々の名称みたいなものをいちいち頭の中で思い浮かべてボタンを操作してこなかった。場所とか記号で覚えていたところはあるので正式名称みたいなもので説明されると逆に混乱する。
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