レッスンのハジマリ

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「……お前、真面目にヤる気ないだろ?その呼ばれ方をするとこっちも萎える」 なんて言いながら、私の背に手を回してくる部長だって満更でもないでしょ? 「萎えるも何も、まだ始まって無いんでいいじゃないですか。久しぶりに感情が高ぶるほど興奮したなんて…大きな第一歩ですね!この調子で頑張りましょう」 「……今日はこれ以上無しってことか?」 「はい、毎日少しずつって…部長も言ってたじゃないですか。一晩で克服できるほど甘くないですよ、パソコンのスキルと同じで!!」 「一緒にされるのは心外だな……」 「ってことで、今日は大人しく添い寝しましょ」 彼の身体を抱きしめたまま、バタン…っと横向きに倒れ込んで添い寝の体勢に入る。 「…沙奈はこういう事に慣れてるのか?やけにあっさり切り上げるんだな」 さりげなく腕を私の首元に差し込んでくる部長。腕枕をするタイミングが神がかっているあたり私よりこういう事に慣れていると思うのだが気のせい? 「不能な呪いを解く、なんて人生で初に決まってるじゃないですか。そんなのに慣れてるスペシャリスト居ないですよ」 「……そういうことじゃなくて、、あー…もう寝よう。明日も仕事だ」 「…おやすみなさい、一弥さん」 「あぁ、おやすみ─…沙奈」 まるで恋人みたいに、当たり前のように添い寝をしよう…なんて言ってしまったが、、案外部長が乗り気だったのでそのまま目を瞑ることにした。 初めての腕の中のはずなのに…妙に安心感を得てすぐに意識を手放してしまった私とは違い、しばらく寝顔を眺めながら私の髪に部長が指を通して居たなんてことは─…すっかり夢の中に浸っている私が知るはずもなかった。
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