ニ〇六二年 五月七日

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 もっとはっきり見ようと近づくにつれ、それが異様に大きな、ブヨブヨとした塊であることが確認できた。  どうやら動物の死骸のようである。  ようであるというのは、それが、今迄に見た事もない容姿をしていたからだ。  頭には殆ど黒に近い鉛色の頭髪とも言えるような、体毛を蓄えている。  体はヌルヌルとてかり、暗い、深い緑。  とにかく汚い。  そして、それは腐敗しているかのような、途轍もない異臭を放っていた。  それが、我々が探しているモノであるということは容易に想像がついた。  これで任務からも解放されるという安堵の気持ちもあったが、その為には生き延び、合流し、報告をせねばならない。  まずは体力の回復を図り、動く事。  その前に食べなければ。  しかし、その食べ物を調達すると言う基本的なミッションを、自分はただの一日ですらクリアできていない。 ──ただ、もし、こいつが食べられるとしたら  我々は生き延びる事が出来るかもしれない。  まずは鮮度測定器を使って、こいつが腐っているかどうかを調べる必要がある。  万が一にも腐っていないのならば、どんな見た目であれ、どんな匂いであれ、食べなければ死んでしまう。  これ程の異臭にも関わらず、測定器が導き出した答えは『鮮度良好』。  食糧が確保できた喜びと安堵からか、頭の中が霧が晴れたようにスッキリと冴え、スイスイと先を進む事ができた。  やはり、心と体と頭は連動しているのだ。
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