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「長谷川 紬葵さん?」
仕事終わり、彼氏と同棲しているマンションに帰ると…部屋の前に真っ黒なスーツを着た怪しげな男性が二人立っていた。
長谷川 紬葵というのは私の名で間違いない。しかし見ず知らずの怪しい人間に「はい、そうです」と正直に名乗るほど私も馬鹿ではない。
無視して一度部屋の前を通り過ぎようとした時、ひとりの男に腕を掴まれた。
「真田 遥馬って、君の彼氏だよね?」
──…遥馬の知り合い?
遥馬というのは付き合って4年になる彼氏の名前で、フルネームを知っていることから知り合いなのかと思ったものの…どうにもただの知り合いとは思えない。
「……なんの用ですか?」
名前を知られている以上、ここで話を逸らしても意味が無いと思い…おそるおそる用件を尋ねてみると─…
「君の彼氏、飛んだみたいなんだよね」
──…飛んだ?
「んー?ピンと来てない感じ?えっと、蒸発って言えば伝わる?行方不明?音信不通?」
何を言ってるんだ、と思いながら…手にしていたスマートフォンで遥馬の連絡先を開いて電話を掛けてみる。
『─…おかけになった電話番号は…現在使われておりません─…番号をお確かめに…』
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