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その時、テーブルの上に置いていたスマホが震えて着信を知らせた。
家主サマ…と表示されている彼専用のスマホ。慌てて通話ボタンを押して着信を受ける。
「もっ、もしもし……」
『……んだよ、やけに出るの早いな?まさか待ってた?寂しがりかよ』
出るのが遅いとそれはそれで文句を言われるが、早くても何かと毒を吐かれるらしい。
「はい…新次郎さんのことばかり考えてて、」
『バカかよ…映画でも見て適当に時間潰せ』
何だか電話の向こうはとても騒がしいみたいだが、一体どこにいるのだろう?まぁ…そんなこと聞けるはずもないのだが。
『っあ、そろそろ着くわ…デリバリー』
「……はい?」
『イタリアン。お前生パスタ好きだって言ってただろ?それ、配達させてるところ…ほらスマホで配達員の顔とか現在地とか分かるだろ?ちゃんとコイツが俺の指示通り動いてるか電話しながら確認しておこうと思って。』
……デリバリーの配達員に一体何を言ったの?
『……よし、到着したみたいだな。マンションの管理人が部屋の前まで持ってくるから、もう少し待ってろ』
「っえ…あの、私…下まで取りに」
『いや、外出るなって言ったよな?あー…ちょっと待て…管理人から電話。』
新次郎さんはスマホを何台か持っているのか…私との通話を繋げたまま着信を受けたみたいで…電話の向こうで管理人さんと話している内容がこちらに聞こえてくる。
『お疲れ様です、辰巳様。カメラ、起動させておりますが映ってますでしょうか?』
『あ?もうちょっと下…あぁーその辺。』
どうやら運んでいる様子を撮影して新次郎さんに見せているようだった。
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