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私は誤解を与えないように言った。
「今日は弟の付き添いできただけです。では、」
私はくるりと踵を返した。が、何者かによって掴まれた。
「行くのか?」
晋作だった。晋作の後ろに怪訝そうな顔をした男たちの顔が見えたことで私は小声でいった。
「行くに決まってるでしょ。女が男に混じって学問なんて。私は家でやるからいい。梅太をよろしく。」
そう言うと私は村塾を出ていった。後ろからなにか聞こえた気がしたがこれ以上でしゃばるのは良くない。
外は寒かった。
「さっむ…。」
早く帰ろうとスタスタ歩き始めたときだった。
妙な視線を感じた。
ぱっと後ろを振り向くと、
「男…?」
忍び装束の男が村塾の屋根からこちらを見ている。とっさに身の危険を感じた私は懐の中から小刀を出した。
男は静かに降りて近づいてくる。同時に私も後ろへ一歩ずつ下がっていく。
「何者だっ!」
言い放つと男の目は弧を描く。
とっさに避けたものは、クナイだった。
「密偵…。」
敵の密偵だ。今更松下村塾に戻れないし私の持っている武器は小刀とクナイ2本だけ。
絶体絶命、背水の陣。様々な言葉が思い浮かぶも、そんな弱気になっては勝てる戦も勝てない。
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