二段式オーブンの攻防

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……と、そう上手くはいかなかった。 なるほど。クリスマスの妖精の夫婦喧嘩は解決したかもしれない。 しかし幸か不幸か、ここの居住者は彼らだけではなかったのだ。 「————チキンではなく七面鳥が食べたいとはどういう了見です!あなたは感謝祭とクリスマスを勘違いしているようですね!」 「そっちこそ毎年文句たらたらでなんなんだ!ラベンダーケーキではなくラベンダーブレッドにしろとは!祝いの日に食べるのはケーキだろう!断じてパンを焼くのはおかしい!間違っている!」 「何ですって!」 「おおう?やるのか!」 「ええ、やってやりますとも!」 「言ったな!よもや二言はないだろうな!」 「もちろんです!こちらは覚悟十分でございます!」 人の心の油断に忍び込む悪魔。 ……それを呼び寄せた本来の原因たる夫婦喧嘩は、クリスマスの妖精夫婦のものではなく……。 オーブンを所有するこの家の、キッチンで繰り広げられる言葉の応酬。それはひいては布巾やテーブルクロス、ランチョンマットの投げ合いに発展する。 こちらの喧嘩は、未だ解決の兆しを見せていないのだった。
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