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僕は冴えないただの高校生
つまらない日常をひたすら消化するだけの日々
そう あの事件が起きるまでは
ある日の下校中
横断歩道を渡ろうとしたら赤に変わったので立ち止まった
しかし慌てた様子の女の子が信号無視で走り出す
車が来る前に渡り切ってしまおう そんな焦りから足取りはおぼつかず、ついに道路の真ん中で転んでしまった
それに気づかない車が勢いよく向かってくる
咄嗟に僕は飛び出した 女の子を守るために
「……起きなさい 転成者よ、起きるのです」
誰かに呼ばれて目を覚ます
おかしい、僕は死んだはず
そうか、ここが死後の世界か
「転成者よ 目が覚めましたか?」
「僕はいったい」
「それは自分の目で確かめなさい ほら、目を開けて」
優しい呼びかけでようやく意識がハッキリとしてきた
それでもまだまだおぼろげな頭で見渡せばそこには
「おっ!!ようやくお目覚めか!! 魔力量はどうだ!?」
「私の言葉を理解して会話も成立しました 翻訳の加護が与えられているためそれなりの魔力量かと」
「よっしゃあ!!久しぶりのご馳走だぜ!!」
「踊り食いにするか?それとも軽く炙るか、ジズサリにするのもえぇな」
化物共がひしめいていた
緑色で二足歩行の豚 羽の生えたダンゴ虫 頭が2つあるデップリと肥えた猫
多種多様な醜い化物が涎を垂らして爛爛と瞳を輝かせながら、まるで高級料理のように僕を見つめている
慌てて逃げようとしたが無駄だった 手足は縛られ自由はきかない
これがいわゆる異世界転生なら特別なパワーでもありそうだが、そんな気配は微塵もない
「おい!!どういうことだ!!僕をいったいどうするつもりなんだ!?」
「食べるんですよ 別な世界から届いた贈り物ですから 魔力量が豊潤で美味しいんです」
「食べる?僕はそのためにこの世界へ?」
「多分違いますが美味しいのでね 私達ホントに頑張りましたよ この神殿を奪うのにどれ程苦労したか」
「嫌だ 食べられるなんてそんな」
「私達は君のような勇者を食べる そうするとより強くなれる その力で人を襲って殺しまくる すると世界がピンチだと判断されてもっといっぱい勇者が届く 最近はあまり送られてこなくて寂しかったですが、久しぶりに良い物が届いて嬉しいです」
「僕達を、人間を、食料としか見ていないのか……?」
「人口がかなり減ったので塩梅が難しいんですよ 適度に攻めないと世界のピンチと判断されないし、かといって人間を滅ぼしてしまえば勇者は送られてこないだろうし なので50年程待ったんです 人間側が復興し、数を増やし、希望を持ち始める瞬間を そうして作られた前線基地をちょちょっと襲えば見事に上物のアナタが送られてきた いやぁ計画は大成功ですねぇ」
「そんな じゃあ僕を食べたらその人たちを襲うのか? ようやく希望が見えたのに?」
「アナタにとってはどうせ見ず知らずの他人です それに元の世界で死んだんでしょう?ならもう一度死んでも変わりませんよ さっ!私達もお腹ペコペコです! 太腿からいきましょうか!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!! 久しぶりの勇者だ!!!!!!!」
「生きたまま解体しろよ!?断末魔もご馳走の1つだ!!!!」
化物共が叫び声をあげて狂喜乱舞
鋭い刃が僕の脚へ近づいてくる
僕は料理へと生まれ変わった
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