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片方の結婚式
思春期に入ると、二人も他の子と同じように反抗的になった。
真賀はヤンキーグループとつるんでいたし、大子は地味なグループを作って固まって、他の子たちを拒否していた。成り行きのように、二人は離れていった。
それから十数年後のことだった。
大子は、真賀の結婚式の式場にいた。
二人が会ったのは、小学校卒業以来のことだった。
キャンドルサービスで真賀が新郎と各テーブルを回ったとき、大子は真賀を見ずに呟いた。
「どうして私を呼んだの?」
真賀は首を傾げて、「友達じゃん。」と言った。
「そうじゃなくて! こんな雰囲気からしてどんくさそうな女、なんでこんな華やかな席に呼んだのかって訊いてるの!」
はっきりと自分の思うように発言する大子に、真賀は目を細めた。
キャンドルを新郎に預けて、大子の両肩に手を置いて言った。
「いつかの、学級新聞作り、覚えてる?」
「学級新聞?」
「担当の月に大子ん家に班のみんなで集まってさ、学級新聞作ろうって言ったのにさ、みんなそっちのけで遊び出したじゃん。」
「ああ、あれ……。」
「で、仕方ないから私が1人で記事をまとめてたところに、大子のお母さんがお菓子の盛り合わせを持って部屋に入ってきて。
大子、みんなが1つずつ手に取ったとたん、菓子盆をサッと奪って、私のそばに置いてくれたよね。まだたくさん、山盛りだったやつ。」
「あ……あれは、みんながあんまりだったから……。」
「私も内心そう思ってた。
だから、お菓子でひいきしてくれたの、すごく嬉しかった。
大子のそういう行動派なところ、大好きだった。
だから今日はぜひ来てほしかったんだよ。」
大子は黙っていたが、ふいにふり向いてニカッと笑った。小学校の頃、男子からのいじめのストレスで虫歯だらけだった歯は、きれいになっていた。
大子は言った。
「おめでとう、真賀。」
「ありがとう。」
笑い返した真賀はふいに号泣した。
たぶん、大子にいちばんそう言って欲しかったのだと、この時はじめて気づいていた。一見たいした可もなく不可もなく育ったように見える真賀にも、いろいろあったのだ。
二人のやりとりを、近くのテーブルから見ている男性がいた。とくに大子のほうを見ていた。
ただ、大子には優しくて頼りになる旦那様がすでにいた。式の前に出欠のさぐりを入れようと電話した時、それを知った真賀は、
「いい女は売れるのも早いねぇ。」
と冗談めかした口調で言ったのだった。大子は電話越しにふふふと笑っていた。
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