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動き出す歯車
「はい、じゃあ号令お願いしまーす」
気をつけ、礼。
「今日、実験するか、俺の話聞くかどっちがいい?」
「「「「「実験!」」」」」
「えーなんで!めんどくねえー?」
「何言ってんだよ如月の話なんか聞きたくねえだろ」
「ちょっと待て、誰だ俺の話聞きたくねえって言った奴」
「俺じゃねーよ!w」
いつも通り騒がしいクラスの中で俺はそっと記憶の海に潜った。
いつか、千紘が人に心開けるようになるといいね
なんで、慈は分かってるんだろう。誰にも言ったことないのに。俺が誰か他人と上手く接することができないのは、過去がトラウマになっているから。親が小さい頃にいなくなってからずっと、人との関わり方を教わらずに来た。誰かが自分の元から離れていくことに対する恐怖を知っているから、もう絶対に仲の良い人なんて作らない、そう無意識に決めたのだと思う。
「桐谷君、実験のやり方分かる?」
ぼーっと考え事をしていると、急に隣の席の奴が声をかけてきた。
「俺何にも聞いてなくてさ…ペアでやるからもしかして桐谷君知ってるかなと思って……」
「え、えっと…これは、多分ここと繋いで…」
急に話しかけられ、反射的に答えてしまったが…今のちゃんと会話になってたよな!?慈…見てた? 見てくれてた? 今の会話って言ってもいいの?? ぱっと振り向き、慈を探すと俺に向かってグッドサインをしていた。
「え、すご…桐谷君すげえ」
「いや、そんなことない」
「あのさ、」
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