総会

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総会

暗い部屋。話し声が控えめに響き、別の声と混ざる。視線を上げたり下げたりしながら冷静を装って隣と喋る者。椅子にも座らず、慌てているようなそぶりを見せる者。落ち着こうとしているのか自分の髪を弄ぶ者。それぞれ行動は違うが、全員の置かれた状況は同じだった。 壁と同化していて見えなかった扉の蝶番が鳴り、それまで喋っていた者どもは瞬時に口を閉ざした。 「輝泉組定例会を始める。座れ」 入ってきたのは組長だ。 「如月慈、お前からは何かあるか」 「はっ、拙いことではございますが、作戦通りでございます」 「作戦とは?」 「私の生徒である桐谷千紘と私が密接な関係になり、████」 「なるほど、よくやった、そのまま続けろ」 「お褒めに預かり、有り難き幸せにございます」 …… 「それでは、解散。2ヶ月後に」 組長が消えるまで、全員が頭を垂れる。 千紘、ごめんね、俺のこと信頼してくれてるのに。俺は目的があって近づいたんだ。それをバラさない…なんて嫌な奴なんだろう。人を騙して、偽善者ぶって。こんなの、何回謝っても赦されるようなことじゃない。ごめんね、千紘。また俺は学校に戻って、同じことを繰り返す。
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