20人が本棚に入れています
本棚に追加
言った超本人は、口に出したその瞬間に記憶から抹消したらしく、俺が何に対して怒っているのか全く分からないようだった。
「男と女がイチャイチャしてるのは良くて、男同士だと見苦しい? なんだその矛盾」
俺は無意識にも人を傷つける可能性のある言葉を吐く奴が嫌いだ。傷つく相手が自分と気が合わない人だったとしても、してはいけないことだ。
やっと自分のセリフを思い出したらしい。
「いや、そういうことじゃ………」
「じゃあどういうことなんだよ! 説明してみろよ!」
後ろで如月がおろおろして見ているから余計にカッコつけたくて、
「そんな男だとか女だとか区別してる奴の方が見苦しいぞ!」
と叫んだ。
「もう終わり、ちひ…ん''ん''、桐谷、ほら、実験やって」
「如月…」
やっと放課後。俺は帰る支度もしないで「補習」を受けに物理室へ向かった。
「慈…」
ゆっくり振り向いた慈の目は既に獲物を狙う獣のものだった。
「…へえ、もう来たんだ。そんなにやってほしかったの? 補習」
「……うる、しゃ…」
噛んだ。最悪。
「図星か? 分かりやすい奴」
「だまれ…!」
「へえ、そんな口聞いていいんだっけ? まぁそんな戯言どうでもいい、さあ本題に入ろうか。昨日言ったよね、クラスメイトと仲良くしろって」
「う……」
「忘れたとは言わせないよ、千紘」
「仲良く、した…」
「嘘つかない。お仕置きの回数が増えるだけだよ」
最初のコメントを投稿しよう!