第11話

1/1
前へ
/17ページ
次へ

第11話

「3人に何かあったんですか?」そこに立ったまま、栗原が心配して訊くと、 「彼ら3人が我々の起源を解明しました。あなたがジュニアと名付けた者は古い言い伝えに関する謎もほぼ解き明かし、それによって古い歴史上の多くの謎も明らかになりました」感情を全く感じさせない口調でそのジュシス人が話した。 「ジュニアが、そしてシニアとスリムが遂に謎を解いたのね!」いつの間にかアトリエの入り口に来ていた由起子が嬉しそうに言った。 栗原もそれを聞いて嬉しかったがジュシス人が言った相談という言葉が気になって、 「謎が解明されたなら良かった。で、相談とは何ですか?」訝しがって訊くと、 「多くの謎が解明されてわかった事は我々の祖先は地球人だという事です」普通の口調でそう答えた。 「はあ?」栗原はジュシス人が何を言っているのか理解できず、思わずとぼけた声を出してしまった。 「えっ?」由起子も同時に驚いて声を出していた。 「……………」しばしの沈黙の後、 「えーっと…、それはどういう事です?」栗原が困ったように訊くと、 「あなた達から感情を学んだ3人がこれまで誰も理解出来なかった古い時代の書物や絵画、文化財に込められた意味を解き明かしたのです。彼らは感情という感覚を用いて未解明だったものを1つ1つ丁寧に紐解いていきその後、全て繋ぎ合わせることでようやく我々のルーツは地球人だと突き止めました」そのジュシス人は早口で答えた。  栗原と由紀子は地球人がルーツだという答えを再び聞いて驚き、顔を見合わせて言葉を失っていた。  それはつまり、目の前にいるジュシス人やシニア、スリム、ジュニアの3人もその祖先は地球人で栗原と由紀子のルーツと同じだと言うことなのだ。  困惑して何も言えない2人には構わず、ジュシス人が再び話し出す。 「詳しく説明しますと、我々は3000年前に地球を脱出した一部の人類だったのです。その頃の地球には2種類の人類が存在しており、1万年程早く発生した先発人類と呼ばれるものが全体の20パーセント、残りの80パーセントを後発人類が占めていました。論理的な思考を持つ先発人類は高度な文化や化学技術を発展させ、当時すでに現在の地球人と同じかそれ以上の技術力を古典的な手法で獲得していました。地球上の現在も謎とされる高度な技術を要する建築物や都市を築いたのはその先発人類です。一方の後発人類は肉体的に優れていた為その運動能力を発展させ、様々な地域へその生息域を広げていきました。ある時、地球上で伝染病が流行り出すと肉体的に脆弱な先発人類はその数を劇的に減らし始めます。後発人類も一時的に影響を受けますが病気のない寒冷地にいたものが生き残り、その数を回復していきました。その頃、先発人類の方はさらに数を減らしていき絶滅の危機を迎えると、既に獲得していた技術を使って地球を脱出する決断をします。どこか住む事の出来る星を見つけてそこで生き残るしかないと地球の動植物を伴い、次々に地球から旅立っていったその一部が我々の祖先だったようです。幸運な事に我々の祖先は地球の環境を移植出来る星を見つけて移り住み、そこでいつか病気が収束した地球に帰ることを夢見ていたようです」感情を交えずに早口で一気に話した。 「なるほど。では、あなた達と今の地球人はその祖先が同じという事なんですね」栗原が感激しながら言うと、 「いえ、我々先発人類は地球では絶滅してしまいました。ここに生きる人類は皆、生き残った後発人類の子孫でDNAも同じものを持っています」ジュシス人は全て分かっているのか、言い切るようにした後、「我々が言い伝えてきた『全てのものは地球に倣え、そして地球を保て』という言葉の意味は「我々が住む星を地球と同じ環境にせよ、そして故郷である地球の環境を守れ」と言う意味で、いつの日か故郷の星へ帰還することを夢見た先人達の願いであり、我々のルーツを示したものだったのです」とその続きを話した。 「あなたが住む星つまりジュシスを何故、地球と同じ環境する必要があったのですか?」疑問に思った栗原がそう訊ねると、 「はい。ジュシスを地球と同じ環境にすれば我々はそこで再び繁栄することが出来ますし、その環境にいればいつ地球に戻っても生きていかれます。ジュシスか地球のどちらでもその環境が変わってしまえば故郷である地球へ帰還することが不可能になるので、先人達の言い伝えはそれを防ぐ為のものだったのです」すぐにそう答えた。 「じゃあ、あの3人は地球へ戻ってくるのね!」由紀子が嬉しそうに訊くと、 「環境破壊を止め、元に戻せるなら戻れます。しかし、このままでは地球が50年と持ちませんので帰還を諦めるしかないでしょう」栗原と由紀子はそう言われて言葉を失った。  2人が何も言えずにいると、 「今すぐに環境破壊が止められたとしても、この環境を可能な限り浄化した後でないと我々はここで生きられません。そして、それには1000年位掛かる予定です」そう言うとジュシス人は周りを見て、 「既に取り戻せないものが多く、それらを我々の星から1000年掛けて移植する予定ですがどこまで回復させられるのかはわかりません。それでもとにかくやるしかないと思ってます」そう続けた。  栗原は1000年という途方もない時間の長さに事の重大さを思い知り、 「そんなに…」静かに呟いて下を向いた。 「私は地球の環境保全とジュシス人の移住を実現する為の部署で代表を務める者で、ここの言葉で言うなら『環境・移住大臣』といったところでしょうか。ここで環境汚染を取り除く作業をしているチームも私と同じ部署に所属しており、これまで必死で活動してきました」ジュシス人はそう話すと、「しかし、我々の力だけではこの環境破壊を止める事は不可能になり、地球の人達と協力して成し遂げようとの結論に達しました。1000年後の移住についても事前に話し合っておきたいのですが、地球の統治方式は国によってまちまちでどの機関とどう話し合うのが良いかわからないのです」事務的な口調で言った。  あまりの事の重大さからすぐにその答えを導き出せなかった栗原は 「どこの機関と話すのが良いかと訊かれても…」口籠ってしまった。  2人がそれ以上何も言えずにいると 「では、また相談に伺います」そう言い残しその大臣は帰っていった。  その大臣の背中を見送りながら栗原と由紀子は混乱した頭を整理できず、黙ったままその場に佇んでいた。  有能な地球人をルーツとするジュシス人の高度な科学技術に基づいてこの地球が50年持たないと判断したのなら、そうなるのは確実だろうと栗原は思った。  そして、自分達人類も発想や技術を進歩させたお陰でようやく環境志向の社会へ転換し、地球にやさしい時代へ移行したとそんな風に思っていたが、それはただ無知なだけで実際は取り返せなくなっている危機的状況なのだと思った。  そうやって環境に対して無知でいる間に地球の環境は益々悪くなり、その寿命を50年も続かないものにまでしてしまったのだ。  すでに手遅れかも知れないが地球に住まう人類全員がジュシス人と協力し、すべての事を環境に関連させて見直さない限り、破滅へのカウントダウンを遅くすることすら不可能だと思い知らされてしまった。  そしてそのカウントダウンは、シニア、スリムやジュニアを含めたジュシス人が故郷の地球へ帰還するという夢を完全に打ち砕く時までの秒読みに他ならないのだった。  栗原は自分達地球人が無意識にしてきた彼らへの仕打ちに心が痛み、ジュシスの人々に対して申し訳ない気持ちで一杯になっていた。    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇   それから1週間、2人はあまり言葉を交わすことなく何かを考えながら過ごしていた。  夕食の静かな食卓で由紀子が口を開く。 「ジュニア、シニア、スリムの3人とジュシスに住む人々の為に今、私達が出来る事ってあるのかしら…?」  同じことをずっと考え続けていた栗原は 「地球が破滅しないように努力する事に違いないのだろうけど、一体どうしたらイイのか…」呟くように言い、「いまさら僕達に出来る事があるのかだろうか…」力なく話し終えた。  しばらく何かを考えていた由紀子が 「今、私達に出来る事は『移住・環境大臣』を手助けする事くらいかしらね…」そう呟き、「いつかスリムが教えてくれたわ。『必要とされる事をやる事が最も社会に貢献することだ』って…」そう言ってゆっくり顔を上げ、「そうよ! 今、私達はジュシスの皆から必要とされているのよ!」少し大きな声になって言うと栗原をじっと見つめた。  栗原もその言葉にハッとして 「ジュシスの人達が地球でやろうとしている事を成功に導く、それが今の僕達に出来る唯一の事かも知れないよ! 早速、どうやったらその話し合いが上手く行くか詳細に計画してみよう!」そう言うと椅子から立ち上がった。  次の日、休めない由紀子の為に栗原が売店へ出向いて『環境・移住大臣』がどうしたら地球の協力を得られるか考えることにした。  その結果、全世界へ同時に訴えるのが最善という結論に達した。  その内容については彼らの考えを聞いてからまとめることにして、それを地球でやる時にどのような方法があり、どんな工夫が必要かを2人で色々と考えた。  それをノートにまとめて自宅に帰ると、敷地の藪に例のジュシスから来た大臣が立っているのが見えた。  2人がその大臣に手招きしてアトリエに入ると、すぐに後からやってくる。 「こんばんは」由紀子が挨拶したが大臣は大きな目で2回瞬きをしただけで黙っていた。  栗原は挨拶をせずにすぐに切り出した。 「先ず、話が理解しやすいようにここだけの呼び方を決めておきます」そう断りを入れると、今も地球に住む人達を『地球人』、地球から脱出した人達を『ジュシス人』と呼ぶ事にした。 「そしてあなたの事は『大臣』と呼ばせてください」そう言って本題に入る。 「お分かりかと思いますが環境問題への協力を得るにはすべての国々と話し合わないと意味がありません。しかし、国ごとにコンタクトすればそれぞれの政治力が働いてしまい、地球規模の一致した協力は得られなくなってしまうでしょう。大臣が望むような協力を得るには世界へ同時に働きかける必要があり、それには各国のトップ達が集う国際会議などの場を利用するのが良いと思います。環境問題を話し合う場ではありませんが近々、日本で開催予定の会議がありますのでそこで訴えるのが良いでしょう。その際、地球がこのままでは50年も続かない事を示す科学的なデータを示す必要がありますがそれは可能ですか?」大臣を見て栗原が訊く。 「データならシミュレーションを含めて沢山ありますが、私はそれが役に立つとは思えません。有史上だけでもどれだけの動植物を絶滅させてきたか地球人は知っています。それなのに環境破壊を止めないのなら、今更それを示すことに意味があるのかと疑います」  大臣は事務的な口調だがハッキリと言い切った。  その指摘が自分へ向けられたもののような気がして一瞬、栗原は動揺したが 「データは訴える内容に科学的な根拠があると示すことだけが目的です。地球人がそのデータを解析できるのか、見せる意味が有るのかについてはあまり重要ではありません」そう言うと、「何よりも大切な事は地球人の心に訴え掛ける事だと思います。その心を動かすことが出来なければ地球規模の大きな潮流を生み出す事が出来ず、効果的な協力も望めないでしょう」そう話して大臣の反応を伺った。 「我々が地球人の感情に訴える必要があるのですね」大臣はそう言った後、何かを考えるように腕を組んで黙ってしまったので栗原は話を続ける事にした。 「地球人の感動を呼び起こすのは簡単ではないかも知れませんが、逆にそれが出来れば協力を得られたようなものです。それには地球人と同じように自然に対する慈しみの愛情を表現し、ジュシス人も地球に発生した人類だと思わせる必要があるでしょう。同じ人類からの純粋なメッセージとして受け止めて貰うことが最も重要だと思いますがジュシス人の論理的な考えだけでそれをなし得るのは難しいと思います」栗原はそこで再び大臣の反応を伺う。 「論理的な説明は効果がないと考えていましたが、地球ではそのような手段が必要で地球人の心とはそういうものなのですね」感情のない口調で言って黙った。  大臣が十分に理解していることを確認した栗原は 「それを成功させるには子供のような純情さで訴えるのが良いと考えていますが、具体的には純情な心を持ち、子供の口調で話せるジュニアの協力が必要です。科学的な事についてはシニアとスリムに感情を交えて説明して貰えば地球人にも受け止め易いものになるでしょう」と、話し終えた。 大臣はそれを聞いて、 「では早速、3人を地球へ呼び寄せます。1週間程時間をください」と言い、アトリエの出口へ向かった。  大臣が藪の中へ消えるのを見送った由紀子は 「また、3人に会えるのね!」と嬉しそうに目を輝かせた。    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇   次の日から3人がやってくるまでの6日間、栗原は具体的な計画を練ることに専念した。  世界の国々が北海道に集い、経済問題について話し合う国際会議が9日後から始まる予定だったのでその日に実行することにしたが、宇宙船に乗ってきたジュシス人を初めて地球人が見た時のことを想像すると様々な心配が生まれ、その計画の作成に栗原は頭を悩ませた。  栗原が一番危惧する、どこか特定の国が彼らとの関係をその進んだ科学技術と共に独占し、自国が優位に立つ為に軍事利用するかも知れないという心配は、世界の首脳が集まる国際会議に登場する事で回避出来ると考えた。  しかし、ひとたび降り立った宇宙人を地球人は簡単には帰さないだろう。 場所が日本だからいきなり軍事行動に出るとは考えにくいがジュシスへ帰還する事を阻止しようと、どこかの国によって彼らが拘束されてしまうかも知れず、そうなれば地球の環境破壊について訴えるどころじゃなくなってしまう。  地球にある武力を遥かに凌ぐ軍隊がジュシスにあればそれを見せることで誰も手出し出来なくなるのだろうが、ジュシスの人達からは力ずくで何かするような印象を受けないので強力なものは持っていないかも知れない。  ジュシス人と比べれば遥かに好戦的で破壊することが得意な地球人と渡り合うには何か対策を考えておく必要があり、それがこの計画を成功させるカギになるかも知れないと栗原は思った。  次の日の夕方、由起子を迎えに行って自宅に戻ると敷地の裏にある藪からジュニアが飛び出して走ってきた。 それを見て、急いで助手席から降りた由起子めがけて走りながら、 「由紀子さん! また来たよ!」右手を伸ばしてオレンジ色のガーベラを一輪差し出した。 「ジュニアちゃん!」と、由紀子が2、3歩前に出て両腕を広げると勢いよくドンッとジュニアが飛び込んで顔を埋めた。 「あっ、」声を出して後ろへよろけた由紀子は嬉しそうな笑顔で「ジュニアちゃん、元気だった?」と言うと、 「うん、由起子さんに会いたかったよ!」腕の中に埋めた顔を上げ、嬉しそうな笑顔で右手に握ったガーベラを見せ、「広場で一輪だけ摘ませてもらったよ、由起子さんにあげる!」さらにその腕を伸ばした。  後からゆっくりやって来たシニア、スリム、大臣の3人が栗原の前に立ち、 「辰則さん、ご無沙汰してます。また会えて嬉しいです!」シニアがそう言って頭を下げると、 「こんなに早く再開できるとは思っていませんでした!」スリムも同じようにお辞儀して言った。  皆、会わない間に感情がさらに成長したようで以前より表情も豊かになっていて、三者三様の笑顔を見せていた。  その成長を見た栗原は嬉しくなって、 「みんな元気にしていたようで良かった。僕もこんなに早く再開できるとは思っていなかったので本当に嬉しいです」とシニアとスリムに満面の笑みで応えた。  4人をリビングへ導き、ソファに腰掛けてもらったがジュニアは離れたくないのか由紀子が座る椅子の横に手をつないで立っていた。  皆を前にして栗原が切り出した。 「先日の計画について打ち合わせる前に、あなた達が戦う手段を持っているのか教えてください。それが計画の成否を左右するかも知れないのです」そう言って大臣を見ると、 「戦う手段が必要なのですか。 我々は戦う事に論理的な利益を見出しておらず、武力のようなものは何も持っていません」すぐにそう答えた。 「何もないの? 地球より遥かに進んだ軍隊があると思っていたのに…」と由起子が驚いたように言い、栗原もその意外な答えに、 「ジュシスのある別の銀河に地球人が辿り着けるようになるには少なくとも数十年は掛かるでしょう。まだ、軍隊など必要ないと思うのも分かりますが…」そう呟いた。 すると大臣が 「我々が別の銀河からここへ来るために必要な科学技術はとてもシンプルなものです。地球人がダークマターを発見し、それが固有引力を持つことさえ理解すれば数年でジュシスへ辿り着けるようになるでしょう」すぐにそう応える。 「じゃあ何故、軍隊を持っていないの? 地球みたいな星から攻められたら、みんなをどうやって守るの?」大臣を責めるような口調で由紀子が言うと、 「守る必要がありますか。 何の為にですか」大臣が感情を全く感じさせない口調で返した。 「何もしなければ…、ジュシスが占領されてしまうじゃない…」決して戦争を勧めている訳ではないと言いたいのか由紀子が声を落とすと、今度はシニアが話し出した。 「わたし達にとって戦う事は失う事に過ぎないのです。わたし達はどんな理由があろうと、先祖から積み重ねてきたものを失ってしまうような事はしません。だから今のように科学技術を発展させることが出来たし、それを地球より遥かに進んだものにすることが出来たのです」  栗原と由起子に大切なものを無駄にしたくないのだという感情がひしひしと伝わって来た。 「もし、絶滅させられたら困るじゃない?」由紀子がそう反論すると、 「戦いにおいて最も大きな損失はどちらかが全滅する事ではなく、相打ちで双方が滅んでしまう事なのです。片方が武器を持っていなければそうならずに済みます」シニアはわかりやすいようにゆっくり話したが、 「相打ちで両方が滅びるなんてことはあり得ないでしょ?」由紀子が食い下がった。  するとシニアが静かに言った。 「今の地球を見て、そう言い切れますか?」  それを聞いた栗原は背中に冷たいものを感じながらその通りだと思った。  どの国もお互いに核ミサイルと共に対峙し、その数は地球を数十回破壊することが出来る程で1度何か起これば相打ちで地球は全滅してしまうかも知れないのだ。  由起子もそれを考えたのか反論できなくなって黙り込んでしまった。  全員が何かを考えていたのかしばらく沈黙が続いたが、 「地球人が攻め入ってジュシスが滅亡しても構わないと、本当に考えているのですね?」もう1度確認したくなった栗原が訊くと、 「わたし達の寿命は200年程でこの先、何世代続くのかわかりませんがいつかは必ず、自然の摂理で絶滅する日が来るでしょう。わたし達は自然の摂理に抗う考えをもっていませんので絶滅は避けられません。自然に絶滅するのと地球に攻められて滅亡するのに大した違いはありませんし、わたし達が反撃しなければ地球は生き残ります」すぐにシニアが答えた。  ジュシス人の余りの潔さに思わず反論したくなった栗原が、 「大臣が言ったように地球が50年持たないなら、そうして生き残ったとしてもすぐに人類に終わりが来て、知的生命体がこの広い宇宙からいなくなってしまうかも知れない…」そう呟くと、 「わたくし達が考える知的生命体は数えきれない程います。ここ、地球にだって殆どの動物や植物がコミュニケーションを取りながら生きていて、その一部は生き残るでしょう」スリムがすぐに応えた。 「植物も知的生命体と言えるようなコミュニケーションを取っているのですか?」栗原が驚きながら訊くと、 「地球人はその方法を失ってしまったようですが、ジュシス人は今でも動物や植物とコミュニケーションを取り、様々な情報を得ています」今度はシニアが答えた。  その後、再びスリムが 「わたくし達は動植物と自分達が同じ生命体であるという認識しかありません。すべてのものはあくまで自然の一部で互いにコミュニケーションを取りなが生きており、別の場所で単体として存在する事はできないのです。そして、それは惑星の中だけの話ではなく、宇宙全体のことなのです」と感情を込めながら語った。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加