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Layer1 始動(1)
頭の奥の方から電子音が聞こえてくる。
電子音はだんだんと近づくにつれ、はっきりとしてくる。
それによって、視床下部と脳幹で睡眠状態から覚醒状態へとスイッチが切り替えられる。
俺は、思い切り手を伸ばして起床の合図であるスマホのアラームを止めた。
なるほど、さっきから聞こえていた電子音はこれだったのかと俺は当たり前のことを思う。
起きたばかりだからなのか妙に頭に違和感を覚えた……というか体全体が若干重い。
耳に熱を感じて、何気なく触ってみると、
「あっつ!」
想像以上の熱さに少し声を上げてしまった。
耳ってこんなに熱くなるのかよと思いながら、触った耳からの熱を感じながら指をさすった。
すると、どことなく自分の顔に似ている顔立ちの母親が俺の部屋のドアを開けて入ってきた。
こういう時は「ノックしてから入って来るようにいつも言っているだろ」というテンプレを言うべきなのだろうかなんて考えたが、そもそもそんな設定はないので言う必要はないな。
そんなことを考えているうちに、母親が俺の顔色を見るように聞いてきた。
「どう? 体調は? 熱下がってそう?」
そうなのだ。
俺は誰にとっても貴重である祝日というすばらしい休日を風邪で寝込むという失態を犯してしまったのだ。
なぜか俺は体調を崩す時はいつも決まって休日という傾向を持っているがために、今のところ皆勤賞で学校に通っている。
「うん。まだ若干重いけど、熱もだいぶ下がったぽいから学校には行けると思う」
またしても俺は続けたいわけでもない皆勤賞を続けることになった。
「そう、学校に行けるくらいの体調ならもう大丈夫ね。あ、お母さん今日の夕方くらいから仕事の出張でゴールデンウイーク明けまで家空けるから、留守番よろしく頼むね」
母親が務めている会社は本社が大阪にあるらしく、年に数回こうして出張に出ることがある。
「わかった。気を付けて行ってらっしゃい」
そう言いながら俺はのそのそとベッドから這い出た。
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