おそろいの抹茶ラテ

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 私たちは笑顔で別れた。青くさい記憶は、いつの間にか懐かしい思い出へと変化している。抹茶ラテの粉っぽさが、まだ甘くほろ苦く口の中でざらついている。  週末、私は何しよう。久しぶりに実家に帰ってみようかな。お母さんが作った肉じゃが食べたいな。そういえば保護猫飼い始めたって言ってたな。一番星を眺めながら、頬を伝う涙をこっそり拭いた。  ***  帰省するのは何年ぶりかな。盆、正月も実家に帰らなくて、母から「たまには帰ってきなさい」とLINEがきていた。 「ただいま」  玄関を開けると懐かしい実家のにおいに紛れて、猫のにおいがする。 「汐璃、玄関すぐ閉めて。こまちが出ちゃうから」 「こまち?」  あぁ、猫か。ドアを閉めて上がろうとすると、黒白のハチワレにゃんこがリビングから顔を出して出迎えてくれた。 「お前が『こまち』かぁ。めっちゃかわいい!」  人慣れしているのか、私の足に絡みつくように顔を擦り付ける。その様子がたまらなく愛おしくて抱き上げた。 「こまちはかわいいねぇ。癒される〜。猫カフェ行かなくても、こまちで充分だわ」 「急に帰ってくるなんて、なんかあったの? さては失恋でもした?」
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