おそろいの抹茶ラテ

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 あ……仕事ね。勘違い、恥ずかしい。さりげなく目をそらした。 「私は普通の事務だよ。職場、ここの近くなの」  動揺してもなんでもないように振る舞ってしまうのは、昔から全然変わっていない。まだ熱いカフェラテを少しだけ口に含んだ。温度が身体に染み込んで広がる。 「全然変わらないね」 「無駄に歳だけ取ってるよ」  笑って受け流した。私はずっと変わらない。すました顔して、なんでもないように装って、いつも逃げていた。あの頃、神垣くんがずっと好きだったのに、結局気持ちは伝えられないまま、気が付けばあれから八年も経ってしまった。 「あ……わりぃ」  バイブ音と共に、申し訳なさそうにポケットからスマホを取り出した。 「気にしないで」 「ごめん、ゆっくりしてって」  彼は残りのコーヒーを急いで飲んだ。そして、ほろ苦い香りを残して席を立った。 「あ、平岡、またね」 「バイバイ」  笑顔で手を振って見せた。大丈夫。ぎこちなくは、ない、はず。 「はい、お疲れ様です……はい……」  通話しながらカフェを出る背中を眺めていた。久しぶりに聞いた彼の声は、自動ドアが閉まると同時に聞こえなくなった。制服からスーツになった後ろ姿を感慨深く思いながら、そして目線をカップに戻した。
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