16人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
出来たてのカフェラテは、熱くてまだ飲めそうにない。私はゆっくり歩きながら、空いている席を探した。
「平岡？」
聞き覚えのある声に記憶がよみがえる。まさかとは思ったけど、そのまさかだった。
高校を卒業して八年、こんな街中にある有名チェーン店のカフェで、昔好きだった人にバッタリ会ってしまった。
「え、神垣くん？」
「え、マジか。久しぶり」
彼は一人でカウンター席にいた。スーツ姿ではあるけれど、笑いかけるその表情は高校の時と変わらなかった。その笑顔を見ると、懐かしい気持ちでいっぱいになると同時に、苦い思い出までこみ上げてしまう。
「良かったら、隣、どうぞ」
「あ、ありがとう」
顔つきや仕草が少し大人になった。でも、爽やかに笑う彼はあの頃と変わらない。こんなふうに神垣くんの隣に座るなんて、当時は考えられなかった。脈が早く打ち、身体中に熱を運ぶ。
「今何やってんの？」
神垣くんは私の隣で、手にしたホットコーヒーを一口飲んだ。
「仕事帰りに少し買い物して、一息つこうかなって思ってたとこ」
彼は急に吹き出して、なぜか笑い始めた。
「違う違う、仕事だよ。今何やってんの？ オレは営業で、近くに取引先があって、ここよく来るんだよ」
最初のコメントを投稿しよう！