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「店長である俺の許可を取ってない時点で問題でしょーがっ! ここはコンビニエンスストア! ライブハウスじゃないのっ!」
そう言って、コンガ先生は許可証をネムに突き返す。咲耶は黙っていられなかった。
「そんな……じゃあ私たちどこで演奏したらいいんですか!? あんなに練習したのに……先生も授業で散々言ってるじゃないですか、『努力は裏切らない』って。先生なんなんですか? 私たちから青春を奪うつもりですか?」
賑やかだった部屋が一気に静寂に包まれる。が、コンガ先生は早々に気付く。
「……ん? なんかさ、先生が全部悪いみたいな空気になってるけどさ……そもそも、君たちはなんでバンドを組んだんだっけ?」
シャオランは少し考えてから、口をもごもごと動かした。
「それは……手先を器用にして手裏剣を……」
「そうそう! 手裏剣! 手裏剣だよね?」
すかさず手を叩くコンガ先生。
「一応聞くけど手裏剣の練習とかは……」
コンガ先生は咲耶たちを見たが、誰とも目が合わなかった。
「あのね、君たち。忘れてるみたいだから、敢えてもう一回言うけども……実技テスト来週の水曜日だよ?」
咲耶たちは目を丸くした。
「え!? 先生なんで!? なんで本番と被せてくるんですか!? ……えっ、まさかイジメですか?」
「先に日程決まってたの、テストの方だよ」
ふたりのやり取りを聞いて、シャオランは分かりやすく頭を抱えた。
「困ったな……先週このお店の前でビラ撒きもしちゃったし……」
これにはコンガ先生が目を丸くする。
「ビラ……聞いてないんだけど?」
「許可なら貰ってるっす!」
すかさずネムが許可証を渡す。
コンガ先生はそこに書いてあるサインを見て、許可証をビリビリに破り捨てた。
「あー! せっかくの許可証があー!」
「先生ひどいっす!」
「安田さんに何か恨みでもあるんですか!?」
「恨みなんてねーよ! すべては彼がバイトだからだよ! 店長である俺の許可がないとそもそもダメなんですっ!」
「じゃあ、先生と安田さんチェンジ! 先生、今日からバイト!」
「なんでだよっ!」
コンビニ店長の怒りは収まらない。
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