咲耶です。バンドはじめました

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* * * 数週間後。 「じゃあ今日もやるか!」  咲耶の掛け声に合わせて、ネムとシャオランは定位置につく。 「はあ……全然上手くならない……私って才能ないのかな……」  シャオランが弱音を吐くと、すかさずネムが彼女の肩を叩いた。 「大丈夫っす! 初日よりは全然上達してるっす!」  咲耶も続けた。 「そうそう、まだ始めたばっかりだし、これからちょっとずつ練習していけば必ず上手くなるよ!」  ふたりに励まされ、シャオランの顔に少しだけ笑顔が戻る。 「なんかふたりに言われると、できる気がしてきた! うん! 私がんばるっ!」  三人は互いに見つめ合った。  咲耶がマイクを握り、ネムがギターを構える。シャオランはスティックを持ってドラムと向かい合っている。 「それじゃあ行ってみよー!」  咲耶の拳が上がり、シャオランのドラムがリズムを刻み始める。そして、それに寄り添うようにネムのギターがメロディーを奏でる。不器用だけどそれでもいい。彼女たちは彼女たちにしかできない『音楽』を……『音』を『楽』しんでいる。そう、彼女たちは今ここにしかない青春を 「何やっとんじゃこらぁー!!」  そのとき、コンガ先生が扉をぶち破ってきて、ナレーションを遮った。 「勝手にアオハル始めないで!」  コンガ先生の叫びがコンビニのスタッフ控え室に響き渡る。 「ていうか、待って。手裏剣のテストあるから練習しなきゃの回で合ってるよね? それとも先生が何話分か飛ばしてきた?」  三人は顔を見合わせる。 「「「手裏剣の回です……」」」  コンガ先生は頭を掻いた。 「いま君たち何してんの?」  三人はまた顔を見合わせ、もじもじとし始めた。 「「「バンド……」」」 「なんでだよ」  三人は黙り込んでしまった。このまま膠着状態に陥ると思われたが、コンガ先生が早々に手を叩く。 「まず目の前の読者さんに謝ろう! たぶん何人か前のページ確認しに行ってくれたはずだから。ね! 謝ろう!」  三人は顔を見合わせた後、お辞儀をした。 「「「ごめんなさい……」」」 「はいっ、よくできました。じゃあ、次ね。なんでこうなったか誰か説明してくれる?」 「それは私が」  手を挙げたのは咲耶だった。
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