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「手裏剣が上手になるためにはどうすればいいか考えたんです。それで相談してみたら、手先が器用になれば手裏剣の扱いも上手くなるんじゃないかって言われて……」
コンガ先生は不意に引っかかりを覚えた。
「ん? 相談って誰に?」
「私のおじいちゃんです!」
「あらー。まぁ……」
彼は両手で頭を押さえた。
「そうか……よりにもよって……」
「え? 何か?」
「ううん。続けて」
コンガ先生に促され、咲耶は先日の祖父との会話を思い出した。
「おじいちゃんに相談したら、昔フォークギターをやってたことがあるって話になって、『楽器は手先が器用になるからいいぞ』って」
「うんうん」
「で、『私なんかでもできるかなぁ』って言ったら、『ワシの自慢の孫なんだぞ! できないことがあるか!』って話になって」
「はいはい」
すると、いきなり静寂が生まれた。何事かとコンガ先生が顔を上げると、キョトン顔の咲耶と目が合った。
「で、今です」
コンガ先生は悟りでも開いたかのような『無』の表情になった。
「なるほど」
彼は部屋の隅に捌けた。
「あのクソじじい余計なこと言いやがって……」
そのときである。彼の首元にひんやりとしたものが当たった。見ると、忍者刀の峰の部分がコンガ先生の首にぴたりとついている。
「コンガよ。実践であれば首が吹き飛んでいたぞ? 少々腕が落ちたのではないか?」
「そ、その声は……」
彼の後ろには、いつのまにか咲耶の祖父である岩爺が立っていた。
「いまさっき『クソじじい』と聞こえた気がしたのだが」
刀はコンガ先生の首元に当たったまま。コンガ先生は冷や汗をダラダラ流しながら話し始めた。
「な、何をおっしゃいます……岩様は我らが甲賀忍者の長。今まで数々の任務をこなされ、歴史に名を残された最強の忍者でございます。そんなお方に『クソじじい』などと言えば、それすなわち『死』を意味します。何かの聞き違いではございませんか?」
岩爺は蛇のような鋭い眼差しでコンガ先生を睨む。コンガ先生は目を合わさないように明々後日の方向を見つめた。
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