咲耶です。バンドはじめました

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「ふむ、そうか。それは悪かった」  しばらくして、岩爺は刀を下ろし、コンガ先生の元を離れた。 「だが鍛錬は怠るな。平安の世とはいえ、いつ何時攻められるか……」 「おじーちゃーん!」  そのとき、咲耶の声が部屋中に響き渡る。 「おじいちゃん、刀持つの辞めてって言ってるじゃん! そりゃあ、おじいちゃんは甲賀イチの忍者だって分かってはいるけどさ……ふとしたときに怪我しないか私は心配だよ……」 「咲耶」  岩爺は静かに刀を鞘に収める。  そこはさすが甲賀忍者の長。たとえ孫の前であろうが、その威厳は……   「ぬふふふふ」  威厳はどこへやら。  振り向けば、満面の笑み。  あっという間に恵比寿様が現れた。 「ねーねー、おじいちゃん! アドバイス通り、バンド組んでみたよ! すごいでしょ?」 「ぬふふふ」 「練習頑張るし、本番セッティングできたら絶対声掛けるからねっ!」 「ぬふふふ」 「もー! おじいちゃん、ぬふふふじゃなくて」 「咲耶、ちょっと」  見かねたコンガ先生は咲耶を呼び寄せた。 「え、岩様って家であんな感じなの?」 「……あんな感じって何です?」  コンガ先生はすかさず岩爺を見たが、こちらに向けられた岩爺の視線には殺気が満ち溢れている。 「いや……いいや。先生、自分の命は惜しいから」  コンガ先生は、これ以上は踏み込まないことにした。
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