第一章・悪役令嬢になったようです。

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第一章・悪役令嬢になったようです。

 私の人生は一体何だったのだろうか?   倉橋萌(くらはしもえ)は、いつものように大学の授業が終わると居酒屋のバイトに向かうため交差点で赤信号が青になるのを待っていた。  まだ人通りも多い場所だが、その後ろで男性数人が騒いでいる事に気づいた。喧嘩だろうか?  「やるなら他所でやれ」  萌は迷惑そうな顔で思っていると、その瞬間だった。殴られた勢いで男性は萌に向かって突っ込んできた。 (あっ……危ない!?)  萌は男性とぶつかり、その勢いで赤になったままの歩道から飛び出してしまった。  いきなり飛び出したものだから踏ん張る事も出来ない。  そして運悪く走って来たトラックにひかれて死んでしまう。  だが、不思議な事に。意識を取り戻した萌が待っていたのは病院でも天国でもなく、知らない部屋だった。  何処かの貴族が住んでそうな豪華な飾り付けとシャンデリア。そして何十畳かと思うほど部屋の広さ。 (ここは何処なんだろう? 夢でも見ているのかしら?)  するとメイドらしき人が部屋を入ってくるなり、起きている萌に驚いてお湯が入ったたらいを床に落としてしまった。 「エイミーお……嬢様!?」 「えっ? エイミー?」 (えっ? 誰それ?)  萌は意味が分からずに、きょとんとするが、そのメイドは慌てて部屋から飛び出してしまう。 「た。大変です。旦那様、奥様。お嬢様が目を覚ましました」  部屋からも聞こえるぐらいの声で騒いでいた。 (えっ? ちょっと!?)  しばらくすると、騒ぎに駆けつけた人達が大勢集まりだした。その中に居る、明るい茶髪で貴族みたいな服装を着た中年男性と女性に抱き締められてしまった。
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