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冷蔵庫に食材があまりなかったので、初めての彼への手料理は凝ったものはできなかった。しかし彼は、よっぽどお腹が空いていたのか、かなりのハイペースで食べていってしまう。特に、どんな具材をいれてもおいしいからという理由で作った味噌汁を、美味しそうにすすっては、おかわりをねだった。
食材は尽きたのに、ご飯が足りないかと恐れた私は、こっそり自分の分は少なく盛った。
明日の朝すぐに、買い物に行かないと。これでは朝ごはんが作れない。
随分長いこと一人暮らしだったので、目の前で手料理を食べてくれている人の嬉しそうな笑顔をみると、その手間さえも楽しみに思えた。
この心の温もりの中にずっといたい。
ご馳走様、と彼が手をあわせた。私はその手をとって、指と指を絡めた。
「カメラと指輪の埋め合わせ、予約しとく。来年、ソメイヨシノの下で」
その時には、この手の指は光り、本物の夫婦になっているのかもしれない。
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