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着替えもメイクも終わると、外でタクシーが待っていた。借り物のドレスを汚さないようにそっと乗り込むと、運転手はゆっくり安全運転を始めた。
タクシーが進むにつれ、車の通りが少ない道に出ていく。よく知らない道にどんどん進み、忙しなかった私の心も、寂しく不安になっていった。
きらびやかな街から出ると、自然豊かな一本の大きな川沿いに出た。橋に向かってタクシーを走らせると、そこに白い服を纏ったひとりの人がぽつんと立っていた。
彼だ。
ゴールデンウィークの約束をしていた彼が、セレモニースーツを着た新郎姿になって待っている。
運転手がタクシーを彼のそばに停めると、彼は恭しくドアを開けてくれた。外から彼が手を差し伸べる。私は反射的に、その手をとってしまった。
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