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そう言葉が降ってきたほうを見上げると、ひらひらと、ひと片の花びらが舞ってきて、私の頬についた。
「すんません」
高い脚立から降りてきて、撮影用かと思われる桜の造花をおろしてきた彼は、その鮮やかな茶髪と洒落たシャツを飾るようにまとわりついた花びらを、煩わしそうにわしゃわしゃと叩き落とした。ネームプレートをみると、このスタジオのアシスタントで、写真家の見習いらしい。
「身内がモデルでよければですけど。オレ、オープン直後繁忙期だけの短期のバイトですし。変な噂もたたないっしょ」
店長は腕を組んでしばらく唸っていたが、よっぽどモデル募集を急いでいるのか、渋々頷いた。
「いいけど、くれぐれも自然体で、照れずに撮ってね」
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