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「ごめん、今日は延期で!」
店長から突如告げられたその言葉に、私は開いた口が塞がらなかった。雨天延期とはきいていたが、今日の天気は快晴だ。
「何かあったんですか?」
困惑して私がきくと、店長も戸惑った口調で答える。
「新郎側からついさっき電話があって。何かどうしても用事があるらしく」
ごめんね、と電話先で重ね重ね謝られるが、謝ってほしい相手は違う人だ。私は何とか怒りを押し殺して丁寧に電話を切ったやいなや、つい舌打ちをしていた。それなら立候補しないでほしい。
朝早起きしたのも、メイクをしたのも、あれこれ悩んだのも、駅まで歩いてきたのも、全て徒労に終わった。改札を通っていなかったのが、せめてもの救いだ。
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