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ところが、悪いことは重なるものである。
延期になったその日も雨だった。朝から晩まで、強く、長い長い雨だった。
薄紅の花びらを落としゆく駅前の桜も、通勤通学に急ぐ人々の靴底に踏みつけられ、コンクリートへ滲むように汚れていく。
「本っ当に、ごめんね」
そう店長に頭を下げられるとともに、撮るはずだった桜は散り、ウエディングフォトの仕事もなくなってしまった。
残念そうにしてみせる店長も、私への謝罪は表向きで、頭の中は補償金のことでいっぱいだろう。
新郎側の彼も深々と頭を下げる。私の苛立ちは収まらないが、その丁寧な整った辞儀が、私が怒るのを許してくれなかった。
造花の桜での室内撮りや、違うシチュエーションでの撮影の提案もされるが、どれも私を納得させるものはない。
もうここでは思い出に残るような笑顔の自分は撮れないと思った。それなら自費で客として、別の店で撮ったほうがいい。
怒りを抑えきれず、不満そうな態度になってしまっていた私は、余計に揉めないように、「失礼します」と踵を返した。
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