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相手も事情があるかもしれないのに。
謝っているのに。
店の外に出て、深呼吸で身体の空気を入れ替えると、人を許せない己の小ささに罪悪感を覚えた。
最悪の気分のまま帰ろうとすると、屋根の下に私が持ってきた傘がないのに気づいた。ビニール傘だったから、盗まれたかもしれない。店には誰も出入りがなかったから、通りすがりの人による犯行だろう。
外は相変わらずの春雨。
例え傘をさして帰っても、足は濡れてしまいそうだ。
何度息を吸っても、湿った重たい空気しか入ってこない。だんだん酸素が足りなくなるような感覚を覚える。足先が少し冷えていく。
こんな時は何をしてもダメだ。
私はため息をついて、濡れるのも諦めて、雨の中へ足を踏み入れた。
「待って」
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