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「あぁ……今日が日曜日で、本当に良かったね。」
「あぁ、まったくだ。」
二人の会話が落ち着いてきたころ、すでに空は明るくなっていた。
光流が翔の家に泊まりに来るときはいつもこう。
だから、出来るだけ光流は金曜日または土曜日に翔の家を訪ねるようにしていた。
一度翔の家に入ってしまうと、翔の両親に必ず止まっていくように勧められるし、それを断るのも申し訳ないと光流自身も思っているからだ。
「少しだけ、寝ようか。」
「そうだな。さすがに休日と言ってもオールで迎えるのは、な。」
二人とも予定がない休日は、こうやって朝方に眠り、昼前に起きる。
そして、その日の気分で出かけたり、翔の家で映画を見たり、ゲームをしたりとダラダラと過ごすのである。
「お前さ、本当に残念だな。彼氏の一人もいれば、こんなにダラダラしなくて済むのにな。」
「その言葉、そっくり返すわ。彼女の一人もいれば、早く寝て早起きして、お洒落して出かけられるのにね。」
翔と光流、顔を見合わせて笑う。
お互い、彼氏・彼女など特定の存在はいなくても、寂しさは感じていない。
幼馴染がいるから。
まるで本当の姉弟のように育ってきた二人だからこその、この心地よい関係。
「なぁ、光流……」
「なぁに?」
「俺たち、幼馴染で良かったよな。」
「どうしたの?急に……。」
翔は、ずっと光流に感謝していたことがある。それは……。」
「お前がいてくれたから、幼馴染っていう存在がいてくれたから、俺は姉ちゃんの死を乗り越えられたのかもしれない。今まで孤独を感じることは無かったのかもしれない……。」
「翔ちゃん……。」
それは、光流が『こうありたい』と思った幼馴染の在り方。
自分の望む形で、翔に幼馴染と言う存在を感じてもらえたことが、光流は嬉しかった。
「でしょ~?綺麗で優しくて、セクシーな幼馴染なんて、翔ちゃん……このご時世どこを探したっていないからね?」
「セクシー……。」
「……それ以上は喋るな。」
姉を失った悲しみ、それ以上の悲しみなど、もう味わうことは無いのかもしれない。
心に消えない傷を負った翔、そして姉のように接してきた存在を失い、同じような心の傷を負った光流。
彼らは寄り添い、支え合うことでその傷を塞ごうとしているのかもしれない。
「ねぇ……買い物でも行かない?」
「あぁ、昼飯食ったら出るか。」
「作るの面倒だからさ、ピザでも頼む?」
「……割り勘な。」
「まぁ、良いか。」
こうして、二人の時間はこの日も変わらず流れていく……。
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