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警察、そして遺族の会が必死に手掛かりを探したが、なかなか見つからずに迷宮入りもささやかれた、この事件。
解決の決め手となったのは、娘・ハルからの通報だった。
「もしかしたら、お父さんが犯人かもしれない。」
ではなぜ、ハルはそんな通報をしたのか?
それは、本当に偶然だった。
その日は雨が降っていた。
母は夕食の準備をしているときに、偶然醤油を切らしていたことに気が付いた。
「ハル、ちょっと醤油切らしちゃったから、買ってくるわ。」
「え?まだ作るの?これから醤油使う料理なんて、ある?」
その日のハルの夕食リクエストは、煮込みハンバーグだった。
もう、味付けも済ませ、ハンバーグを煮込んでいる段階。
母はメインディッシュのリクエストがあった場合、料理をしっかりとその料理に合わせる。
ハンバーグなら洋食、餃子であれば中華……など、出来るだけ合わせるのが母のポリシーでもあった。
故に、煮込みハンバーグの日に醤油を使うことなど、ほとんどない。
しかし、この日は違った。
「お刺身、安かったのよ。買ってきちゃったから一緒に食べよう。お父さんも、お刺身大好きじゃない。」
「あー、安売りに負けたか……。いいよ、私が買ってくるよ。」
「あら、悪いわね。じゃぁお願いするわ。」
母がひとりで料理をしてくれているのに、その上雨の中、料理を中断させてまですぐ近くのコンビニに買い物に行かせるのは申し訳ない、そうハルは思ったのだ。
ハルは、クールに思われがちだが、気遣いの出来る、優しい娘であった。
「ほかに買ってくるものある?」
「特にないよ。お釣りはお小遣いにしていいから、好きなもの買っておいで。お菓子はほどほどにね。」
「ホント?ありがと! すぐに行ってくるね!」
中学1年生にとって、1,000円弱の釣銭でも小遣いになれば嬉しいもの。
雨の中、スキップをするように外に出た。
「お父さん、そんなにお風呂長くないから、急ごう。」
コンビニへの道のりを傘をさして走り出した、その時。
「あ、お父さんの車、壊れてるんだっけ。雨降ってるけど大丈夫かな?」
それは、娘なりの気遣いだった。
家の敷地には、駐車スペースはあるがガレージや屋根の類がない。
ハルは、車の壊れた部分から、水がしみ出したりはしないか心配したのだ。
「でも。どこが壊れてるんだ……ろ。」
壊れている箇所に、ビニールシートでもかけてやろうとチェックしていた、その時だった。
トランクルームから、何かがはみ出しているのを、ハルは見つけてしまった。
「……ロープ?」
恐る恐るロープを引っ張ると……。
「これ……血?」
ロープには、ところどころ血痕が付着していたのだった。
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