第1話A:消えない傷

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姉の遺体が発見されてから、さらに4人もの少女が犠牲となった。 彼―――天羽 翔(あもう しょう)は、少年ながらも犯人を捕まえるために毎日動き回った。 犠牲者たちの遺体発見現場、そこに至るまでの道のり、それぞれの発見現場を線でつなぎ、その周辺をしらみつぶしに歩いた。 しかし、犯人の痕跡すら見つけることは出来なかった。 犯人が逮捕されなければ、犠牲者たちは、姉は決して浮かばれることはない。 翔は、諦めることなく、何度も何度も近隣住民に聞き込みをし、怪しいと思うところに足を運び、山や川の暗がりにまで足を踏み入れた。 「お願い、無茶なことはもうやめて。あなたまで失ってしまったら、私はもう……。」 そんな翔を窘めたのは、他でのない母だった。 「俺が絶対に、犯人を見つけ出してやる。絶対に許さねぇ。俺が、この手で必ず殺してやる……!!」 翔は、犯人に対する恨みを強く持っていた。 平穏な日々を、そしてかけがえのない姉を奪った犯人が、憎くて仕方なかったのだ。 それでも、母は翔を止めた。 「お願い……復讐なんて考えるのはもうやめて。私は……いいえ、、お父さんも、もう心に傷を負うのはたくさんなの……。あなたには、普通に育って欲しいのよ……。」 「だって……」 翔は、納得いかなかった。 姉を殺されたまま、自分たちは泣き寝入りをするしかないのか? まったく捜査の進まない警察に任せたままで、本当にこの事件は解決するのか? 少しも捜査が進まないのなら、せめて糸口だけでも見つけたい。 翔はそんな思いでいっぱいだった。 衝突する、翔と母。 「私たち遺族で言葉をもっと交わして、近隣の皆さんの力も借りよう。情報提供を呼び掛けて、警察に協力しよう。それが、私たちに出来る、最善の方法なんじゃないかな?」 そんな二人にそういったのは、父だった。 「私だって、悔しい。犯人を殺してやりたい……その気持ちは翔と変わらない。でも、それを本当にお姉ちゃんは望むだろうか? 憎しみに塗れる私たち家族の未来を、本当にお姉ちゃんは望むと思うのかい?」 父の言葉。 翔の脳裏に、姉の姿が浮かんだ。 ―――私は、大学に進学しなくてもいいんだ。家族がみんなで笑って、楽しく暮らしていければ、それが私のいちばんの幸せなの――― いつも、家族のことを大切に思ってきた姉。 そんな姉の言葉が思い出される。 「……わかった。父さんの言うとおりにする。もう無茶なことは、しないよ……。」 翔は、両親の顔をしっかりと見てそう答えた。
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