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姉の遺体が発見されてから、さらに4人もの少女が犠牲となった。
彼―――天羽 翔は、少年ながらも犯人を捕まえるために毎日動き回った。
犠牲者たちの遺体発見現場、そこに至るまでの道のり、それぞれの発見現場を線でつなぎ、その周辺をしらみつぶしに歩いた。
しかし、犯人の痕跡すら見つけることは出来なかった。
犯人が逮捕されなければ、犠牲者たちは、姉は決して浮かばれることはない。
翔は、諦めることなく、何度も何度も近隣住民に聞き込みをし、怪しいと思うところに足を運び、山や川の暗がりにまで足を踏み入れた。
「お願い、無茶なことはもうやめて。あなたまで失ってしまったら、私はもう……。」
そんな翔を窘めたのは、他でのない母だった。
「俺が絶対に、犯人を見つけ出してやる。絶対に許さねぇ。俺が、この手で必ず殺してやる……!!」
翔は、犯人に対する恨みを強く持っていた。
平穏な日々を、そしてかけがえのない姉を奪った犯人が、憎くて仕方なかったのだ。
それでも、母は翔を止めた。
「お願い……復讐なんて考えるのはもうやめて。私は……いいえ、、お父さんも、もう心に傷を負うのはたくさんなの……。あなたには、普通に育って欲しいのよ……。」
「だって……」
翔は、納得いかなかった。
姉を殺されたまま、自分たちは泣き寝入りをするしかないのか?
まったく捜査の進まない警察に任せたままで、本当にこの事件は解決するのか?
少しも捜査が進まないのなら、せめて糸口だけでも見つけたい。
翔はそんな思いでいっぱいだった。
衝突する、翔と母。
「私たち遺族で言葉をもっと交わして、近隣の皆さんの力も借りよう。情報提供を呼び掛けて、警察に協力しよう。それが、私たちに出来る、最善の方法なんじゃないかな?」
そんな二人にそういったのは、父だった。
「私だって、悔しい。犯人を殺してやりたい……その気持ちは翔と変わらない。でも、それを本当にお姉ちゃんは望むだろうか? 憎しみに塗れる私たち家族の未来を、本当にお姉ちゃんは望むと思うのかい?」
父の言葉。
翔の脳裏に、姉の姿が浮かんだ。
―――私は、大学に進学しなくてもいいんだ。家族がみんなで笑って、楽しく暮らしていければ、それが私のいちばんの幸せなの―――
いつも、家族のことを大切に思ってきた姉。
そんな姉の言葉が思い出される。
「……わかった。父さんの言うとおりにする。もう無茶なことは、しないよ……。」
翔は、両親の顔をしっかりと見てそう答えた。
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