第十四章 クローン

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 うちの菫はかわいそうな娘。生まれてからずっと父親を知らなかったから。  つらい目に遭わせて本当に申し訳なく思ってる。  やっと本当の父親と暮らせることになるんだね。  お互い子連れ再婚だけど、絶対にうまくいくよ。  幸季さんが奥さんに産ませた娘たちのことも、私は実子のように愛すると誓うよ。  私たちの再婚の障害はあの世間知らずでしょぼくれた奥さんだけ。  そっちの娘たちはもう幸季さんの噓を信じて、奥さんのことを嫌ってるんだよね。  早く奥さんの不倫とDVをでっち上げて身一つで追い出してやってよ。  かわいそうだから、追い出したあとでも月に一度は娘たちに会わせてあげればいいよ。でも娘たちに不倫女とか暴力女とか罵倒されて、すぐに心が折れちゃうと思うけどね。  いよいよ私も幸季さんの奥さんになれるんだね。正直体が震えるよ。この日が来るのを十五年待った。あふれる想いをもう抑えられない!  幸季さん、愛してる! 私を構成するすべての細胞があなたを求めてる! また昔みたいにすべてを忘れてあなたに抱かれたい! あなたのためなら私は死ねる! 逆に誰かを傷つけてでもあなたを奪いたい! 十五年前、お金と権力を振りかざしてあなたを奪っていったあの女が憎い! この十五年、私の心があなたを忘れたことなんてただの一度もなかった!
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