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「人妻キラーさんが僕と両想いの関係になりたい? 僕なんて何の取り柄もないつまらない男でしかないのに……」
「あなたはつまらない男なんかじゃない。昨日、あなたが私に送ったオープンチャットの文章を全部読み返してみた。あなたは誰よりも誠実に生きてきた。さっきあなたは嫌な過去を思い出して、今でも吐き出しそうになると言った。過去の結婚生活がトラウマになっていまだにフラッシュバックに苦しんでいるのは私も同じ。同じ傷を持つあなたとなら、つらかった過去を乗り越えて前に進んでいけると思った。あなたも同じ考えならうれしいのだけど」
「ぼ、僕も人妻キラーさんと同じ考えです!」
「それはつまり私との交際がOKという解釈でいいのかな?」
「はい、喜んで!」
どこかの居酒屋の掛け声のような返事が返ってきた。願いが叶って鉄雄と交際できることになったのはよかったけど、私を人妻キラーと呼ぶなと言ったことと私に敬語を使うなと言ったことは記憶に残らなかったようだ。
「あなたが望むなら、今日このままどこかで休憩していってもいいけど」
「人妻キラーさんと違って僕はまだ離婚できていません」
「離婚はまだでも、すでに聡美さんとの婚姻関係が破綻してるなら問題ないはずだから」
「一週間待って下さい。必ず離婚してみせますから」
「あなたは誰よりも誠実に生きてきたとさっき私は言ったが、どうやら私の言葉に嘘はなかったようだ。あなたを信じて待つことにするよ」
「人妻キラーさん、ありがとうございます!」
なぜか鉄雄の両目から涙がこぼれ落ちた。うれし涙なのだろうか? よく分からなかったが、私のハンカチで顔の涙を拭いてあげた。さっそうとしていた幸季と違って、鉄雄は母性本能をくすぐるタイプのようだ。
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