釣り

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釣り

船の上でやることなんて、釣りしかない。 そう思った俺は馬鹿だと思う。 こんなデカい船から釣糸垂らして、何が食いついてくれるんだ…。 カツオか?マグロか? 食いつくわけない! 池で釣りするレベルの小さい釣り針で、何を釣れって言うんだ!餌なんてあっという間になくなるわ! ルアーもリールもないし、何も釣れるわけない。 ……ツボ放り投げたら、タコでもはいらねぇかな…。 「ジーク様…釣りは止めますか?」 「うん。今日もまた1つ、俺は自分の無力さを知った。」 「あの…頭は大丈夫ですか?」 王子様に向かってその聞き方よ…。まぁ、レイモンドは頭が良いから、魚なんて釣れないのは解ってて付き合ってたんだろうし、申し訳ない。 「暇だ…」 「暇ですか…」 「すげぇ暇…」 「だったら、仕事をしますか?」 「仕事?」 「はい。甲板掃除とか。」 掃除は陽に焼ける…。顔がピリピリするから嫌だ。 「室内競技にしてくれ。」 「競技……」 「そうだ!料理とか!」 「作れるようでしたら、それでも構いませんが。」 料理はキャンプで作った事あるし、まぁ包丁くらいなら使える。 「キッチンに行く。」 今まで自分の部屋と甲板くらいしか行き来してなかったから気がつかなかったけど、結構船員がいる。 今頃寝てたりご飯食べたりしてる奴もいる。 船って24時間進んでるもんな…。俺の知らないところで頑張ってくれてる人がいたのか…。 キッチンに着いたけど、干し肉とかそんなのしかない。 「壊血病とかにならないのか?」 「ドライフルーツがあるので、何とかなります。」 あぁ、あの干し葡萄みたいなやつか…。 「ジーク様、『壊血病』をどこで知ったのですか?」 「マンガ」 「マンガとは?」 やばい、また変な事を言ってしまった。ジークは頭が良くないんだから、色々知ってたら駄目なんだよな。 「船に乗る前に調べたんだ。たしかマンガっていう本だった気がする。」 「……」 めっちゃあやしまれてる…
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