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海は広いな
ジークになって2日目。
俺は今、海の上にいる。
ヅラのオッサンが『ミクニレニアへ行け』って言ってたのは覚えてるけど、船移動は聞いてないぞ。
「ハァ……」
ジークの体は三半規管がめっぽう弱いらしい。もう、朝から吐きっぱなしで、胃液すら出てこないくらいだ。
この船に乗ってすぐに取説で船酔いについて調べたが、役に立たなかった。
【船酔い対策】
30分ほど前に、酔い止め薬を服用しましょう。
それだけだった…。
あったら苦労してねぇし!!
てか、この国で出来る対処法の取説にしろよ!異次元共通にするな!
ああ…
異世界転生・転移マンガや小説でウッキウキの主人公達に問いたい…。現代日本より後退した文明の世界へ来て何が楽しいのかと。
どうせならSF設定がよかった。空飛ぶ車があったり宇宙に移り住んでるとか、そういうの。病気も薬1個で何でも治癒できるとかさ。空想科学、近未来ワールドがよかった!
ジークという男の体で、田中 小太郎が生きている。
これ、俺に何の得があるんだ?
地球では俺は死んでて、家族や友達は悲しんでるだろう。『死にたくない』ってのは、田中 小太郎として生きていたいからであって、ただ生きてりゃいいって事じゃないんだよな。
『だったら死ね』って言われたら、もう怖くて無理だけどもさ。
辛い事はまだある。
一応俺は王子なので、護衛がいる。
どんな奴なのか人物取扱説明書で確認したところ、残念な結果が書いてあった。
2人の護衛は俺の事が大嫌いらしい。
まず護衛の1人は
トマス・サルキーラ 21才
王国で1番強い剣士で、曲がった事が大嫌い。少し柔軟性にかけるが真面目な男。
短髪の黒髪、がっちりとした体格に焼けた肌、キリッとした眉に鋭い目付き。見た目だけでも強いのは解る。
トマスの腕は俺の腕の3倍以上の太さだし、剣で斬られたら真っ二つ間違いなし。
もう1人ついてきたのは、レイモンド・カストという男。護衛というよりも賢人だ。ジークの頭の悪さをカバーするために、国一番の切れ者がついてきてる。頭の良いサラサラ茶髪長身イケメンだが、こいつの笑顔は嘘臭い。
たった2人しかいない付き人にもれなく嫌われてる俺、切なすぎる。
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