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「痛たたた……あっ!?鼻血でてるっ!!」
「それくらいの出血なら折れてない。」
「そういう問題じゃない!!」
コタローとトマスのやり取りを見て、セフィルが笑ってる。セフィルが楽しそうにしてるのは久しぶりに見た。
一週間前の早朝、コタローがいなくなった。トマスとレイモンドが焦ってたのを見て、俺は思った。
多分、コタローはレイトモンドの弟子じゃなくて、2人の主だ。
何者なんだろう…とは思うけど、コタローは自分の事をあまり喋らない。言いたくないのか言えないのか解らないから、こっちも聞けない。
コタローは良い奴だけど、俺達全員と一線引いてる感じがする。人には立ち入ってほしくない事があるのは当然だけど、泣くくらい辛い事があるなら言ってほしい。
多分コタローは、奴隷市で俺を買うつもりなんて無かったんだと思う。だから、俺に『住んでる所に帰してやる』って言ってたんだ。
何も命令しない。俺を買った事を申し訳なく思ってる。だから、自分から俺に詳しい事を聞いてこない。
買った側と買われた側は『主人と下僕』だから、平等じゃない。
俺がコタローと対等になりたいと願っても、それは無理だ。コタローから言われなければ駄目だ。でも、コタローは負い目みたいなものを感じてるから、そんな事は言わない。
コンコン
聞こえるか聞こえないか、こんな風に静かにノックするのはレイモンドだ。
ドアを開けると「おやつにしましょうか」と、にっこり笑ってテーブルに何か置いた。
「マーマレードジャムとパンです。」
「まーまれーど?」
「オレンジのジャムです。」
一口大のパンにオレンジ色のジャムをつけて、レイモンドがセフィルに手渡した。それを食べて、セフィルの目が輝いてる。
「甘くて美味しい!」
「それは良かった。」
俺も1つ食べてみたけど、セフィルの言う通り甘くて美味しい。最近、コタローはおやつ抜きで頑張ってるから、少し申し訳ない。
おやつを食べた後、セフィルは寝てしまった。
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