蚊取り線香

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蚊取り線香

この1週間、毎日泥団子を投げ付けられて、青い痣が沢山出来ている。あちこち痛い。ベッドに寝るのも痛い。 あまりにも俺の扱いが酷い…。 水を浴びで泥を流してから、夕飯を食べにダイニングに行くと、今日はバスティとセフィルがいた。 「バスティ、久々だな。セフィルは元気になったのか?」 「うん、今日から皆でご飯を食べるって。」 「そか。」 セフィルが元気になればバスティも安心だろうし、良い事だな。 パチン 「蚊が多くね?」 「うん。今からもっと増える。」 「今より…」 「うん」 やっぱ、蚊帳がいる。けど、何で作られてるのか解らない。 蚊取り線香…、取説に原材料とか載ってたりしないかな。 「なぁ、バスティ、セフィル。いつも蚊が出てきたらどうするんだ?」 「煙で寄せ付けないようにしたり、長袖を着たりかな…。」 このジメジメ暑い時に、長袖は嫌だ。 「煙って蚊取り線香みたいなのがあるのか?」 「かとりせんこう?俺達が住んでた村では蝋燭やランプはなかったから火を起こしてたし、それで少しは煙が出てた。けど、量も多くないから、殆んど意味がなかった。」 くそ… 『たかが蚊』だと思ってたけど、めちゃくちゃ厄介じゃね?このままじゃ、夜も眠れないぞ。 「レイモンド、何か良い方法ないのか?」 「1番いいのは、蚊が卵をうみやすい環境を作らない事ですね。」 「どんな?」 「使わないバケツに水を入れたままにしたり、水溜まりを放置していると、ボウフラが大量にわきます。あと、雑草は抜いた方がいいですね。蚊の住みかになりますから。」 なかなか面倒だな。 「明日から『家の回りの草、全部抜く大作戦』開始だ!」 「勝手に開始するな。明日も特訓だ。」 「トマスはセフィルが沢山蚊に刺されてもいいのか?」 「それは……」 トマスとレイモンドは俺以外には甘い。俺が『蚊に刺されるのは嫌だ』と言っても聞き入れてくれないけど、セフィルの事は絶対に心配する!! 「解った」 思った通りだ。 作戦としては上手くいったけど、なんか切ない…。 明日は草刈りをして、明後日は蚊が嫌いそうな物を探しにいこう。
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