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翌日、バスティとレイモンドが奴隷市に行ったので、居残り3人でお菓子作りを開始する。
「セフィル、ジャムを作るぞ!」
「うん!」
レイモンドから預かった作り方を、俺は読み上げた。
「オレンジをよく洗う。皮を細かく刻んで、半時ほど煮る。それを一晩水にさらす。………え?」
「一晩かかるの?」
「…って書いてある。」
「じゃあ、今日は切って煮るだけ?」
「うん」
お菓子作り30分で終了……
なんか、セフィルが拗ねてる気がする。
昨日の夜、作り方を確認しなかった俺も悪いけど、レイモンドも教えてくれてもよくね?
どうしようかな。さっそくやる事がなくなった。
俺が悩んでる隙に、トマスがセフィルに言った。
「セフィル、剣術の稽古をしてみないか?」
「剣術?」
「強くなれば、身を護れる。」
「面白い?」
「ああ。」
「じゃあ、やってみる!」
セファルが納得したので、3人で庭に出た。
俺は練習用の剣で、セフィルは木で作られたナイフで、トマスはオヤネム語の取説を手に俺達を指導する。
トマスはセフィルに『筋が良い』とか『すぐにコタローより強くなれる』とか言ってる。
バスティに負けるのはいいとしても、4才も年下のセフィルに負けるのは嫌だ!
「トマス、俺にも教えろ!!」
「いつでもかかって来れば良い。セフィルに教えながらでも、コタローの相手は出来る。」
「いつでもいいんだな!その言葉、後悔するなよ!」
今すぐ攻撃したって、剣を弾かれて終わり。何か作戦を考えないと。
とりあえず、泥団子を作ってトマスに当てよう。
見付からないよう井戸で水を汲んで、土を濡らして泥団子を作った。
「よし、10個あれば1個くらい当たるだろ。」
セフィルに当たらない角度から5つくらい投げたけど、簡単に避けられた。
くそ…!
続けて投げた泥団子の1つは、トマスから3mくらい離れた所にいるセフィルの所へ飛んでいった。
「危ないっ!!」
逃げるよう言おうとしたけど、セフィルは木のナイフでそれを受けた。泥団子は粉々だ。
「ヤッター!当たったー!!」
大喜びしてるセフィルの頭を、トマスがよしよしと撫でている。
「剣術って面白いね!」
「そうだろう。」
何か、いつの間にか仲良くなってるし。
「コタロー、コントロールが悪すぎる!!セフィルに当たったらどうするんだ!」
「すまん……」
リトルリーグで補欠だった、俺のヘナチョコ投球が当たるわけがない。
何で早く気づかなかったんだ…。
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