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船旅10日目
驚くほど体力は落ちたけれど、もう吐く事なく過ごせている。
ん?
何か船首が騒がしい…気がするが、俺はしんどいので動かない。船員よ、頑張ってくれたまえ。
「ジーク様、奥の部屋へ隠れてください。」
トマスが険しい顔をしている。今日まで殆んど俺に話しかけて来なかったのに、それほど深刻な事態なのかもしれない。
「何があったんだ?」
「海賊です。」
「それは…大丈夫そうなのか?」
「相手も相当大きな船なので、何とも。」
神め…、生き返らせておいて2週間で殺す気じゃないだろうな。いや、十分ありえる。
「よし、俺は部屋にいるから、よろしく頼んだ。」
俺にどうにか出来るはずもないけど、部屋で海賊の取説でも読んでみよう。
「取説」
ポンっと音をたてて薄い取説が出てきた。
【アーヴィン海賊団】
船長
アーヴィン(69才)率いる、17人で形成された海賊団。
船を乗っ取り荷を奪い、男と老人は皆殺し、子供と女は売るために捕まえる。1度狙った獲物は確実に仕留める。
ピクルス海で最も残忍な海賊団。
サラッと絶望を叩きつけられた。
海賊についてはもういい。対処法みたいなのはないのか。
【困ったときは】
1、話し合い→7ページ
2、逃げる →8ページ
3、海の藻屑コース →9ページ
とりあえず、話し合いだ。
7ページっと…
話し合い不可能
……うん、予想通り。
なら、逃げよう。8ページだ。
船の構造により可能。
おお!これならいけるかも!
俺、一応王子だし、海賊船より良い船に乗ってるはずだ!
「この船の取説」
ポンっと、また薄い本が出てきた。
ひとつひとつ別の取説が必要だなんて、効率悪すぎる…。
【ナターシャ貨物船】
本国からの荷を運ぶ船。
ジーク・アサフェルトは荷の1つ。
貨物船……?
俺、王子なのに、荷物扱いされてんの?
この取説の書き方だと、付き人の2人は荷物扱いじゃないのか。
まぁ、いい。スピードは速いのか?
【速度】
1ウニで30マリモ
マジか…、単位の意味がわからないとか。
ウニとマリモって、もう北海道しか思い浮かばないぞ。
きっと1時間で30……キロ?だ。
くそ…、自動翻訳と通訳機能、もっと働けよ!!
もしかして、魔法で出てくる取説は欲望の神からの付与だから、知識の神は干渉出来ないとか?
記入ミスで人の生き死に変えられるくせに、融通きかなすぎだろ。
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