30人が本棚に入れています
本棚に追加
海賊
とりあえず、海賊船の速さはわかった。
1ウニで20マリモだ。
…単位はよくわからないが、この船の方が速いのはわかった。
結構差がある。今ならまだ逃げれるはずだ!
「トマス!レイモンド!」
「ジーク様?」
「部屋にいてください。」
いても邪魔だと言いたいんだろうけど、俺も死にたくないので言わせて貰う。
「こっちの貨物船は1ウニで30マリモ、アーヴィン海賊船は1ウニで20マリモ。今なら逃げきれるんじゃないか?」
「ジーク様、どこでその情報を?」
レイモンドがキョトンとしている。いつも、胡散臭い笑顔なのに。いや、今はそれどころじゃない。
「ちょっと、小耳に挟んだんだ。で、どうなんだ?」
「ジーク様の仰るように、速さではこちらが上なのですが、こちらは大量の荷物を乗せておりますので。」
そりゃそうだ。貨物船だしな。
俺はお荷物扱いだし……
「やっぱり、今から逃げる切るのは無理なのか…」
「厳しいですね。」
仕方がない、最後の手段だ。
『海の藻屑コース』を選ぼう。
「海賊船を沈めるぞ。」
「此方が先に沈む可能性があります。」
「何でっ!?」
「相手もそれなりに船を沈める武器は持ってるはずなので。」
取説にはこっちが優勢っぽいと書いてあったし、大丈夫な気もするけど。
「ジーク様を危険に晒す事は出来ません。確実な方法を取ります。」
そんなものがあるのか?海兵でも敵わない非道な海賊なのに。
いや、待てよ。
トマスって1人で10人くらい軽く倒せるって取説に書いてあったな。
「レイモンド、あんたの選択は『船上戦』なのか?」
「はい。」
「トマス、海賊は17人だ。倒せる自信は?」
「あります。」
取説に『戦いコース』はなかったけど、船に誰が乗っているのか解らないから書いてないだけだったのか。結局、取説なんてそんなもんだ。応用するのに役に立たない。
「レイモンド、トマス、あとは頼んだ。俺は足手まといになるから部屋に戻る。」
男子高校生に、船上で白兵戦なんて無理だから仕方ない。
俺は人望もない薄っぺらい王子だから、逃げてもいいはずだ。
・・・・
「レイ、船の速度とアーヴィン海賊団が17人だとジーク様に教えたか?」
「あの海賊団が何人なのか、俺でも知り得ない。」
「じゃあ、何で知ってるんだ?」
「さぁ……」
最初のコメントを投稿しよう!