あのタクシーに乗ろう!episode①(そのドアを開けると何かが始まる)

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【13時20分】 「よし、何人か乗せたな。じゃあそろそろT駅に行こう。栄行タクシーの共同駅乗り場があるから。皆も居るだろう」 真田が一條を見ながら言う。 そこから車を走らせる事15分ほどでT駅に着いた。 T駅とはT市S町にある私鉄◯◯鉄道の運営する駅の1つで、付近には飲食店など様々な店も建ち並び人の出入りも頻繁にある。駅を利用する1日の乗降客数は35,000人。そこそこ大きな駅である。 T駅のタクシー乗り場に向かうと同業他社の車に混ざって後方に栄行タクシーの車が4、5台待機しているのが見える。 その車から少し離れた場所で栄行タクシーの制服を着た乗務員が集まり話し込んでいる様子だ。 真田の指示で一條がその最後尾に車を停めた。 「じゃあ降りてきて。皆いるから紹介しとくわ」そう告げて前を歩きだした。一條は緊張しながらついて行く。 「ウィ~~ッ、おつかれ~~!」真田が調子良く手を上げながら輪になって話す栄行乗務員達に近付く。 「班長!」そこにいる皆が振り返る。 そこにいたのは5人の面々なのだが、皆なかなか個性的な雰囲気を醸し出していた。 「班長!さっき源さんが乗り場に来て、ものすごい勢いで班長を探しに行きましたよ!」 年齢的には見た目一條より少し下くらいの男が声を大きくして真田に詰め寄る。 髪の毛を茶髪にしており、ズボンを締めるベルトは大きな銀のバックルに先端部分は長く垂れ流しておりいかにもチャラそうだ。 今度はもう1人別の男が真田に話し掛けた。 「班長!また山崎が来てたぞ!あの野郎、今日は相川さんがここに居ないとなると俺たちのタクシーには乗らず帰って行ったが」 この男は真田と同年代くらいであろうか、黒いサングラスをかけて細いネクタイをしている。 「まあ待て!分かった!」片手を前に出し指を広げ、止まれの合図をして2人の会話を遮った真田が続ける。 「社長も言ってただろうけど今日から新人が入って来てるから!じゃあ君、挨拶を……」真田が少し偉そうに一條に自己紹介を促す。 「どうも、新人の一條耕介です!タクシー初めてですがよろしくお願いします!」 大きく頭を下げると、そこにいる皆が一條を歓迎する雰囲気になった。
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