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目を覚ますと、そこは病院だった。周りはカーテンで仕切られ、4人部屋の廊下側のベッドに寝かされていた。
ゆっくりと起き上がると、腕からチューブが伸び点滴をしている。
通りかかった看護師が気づき、医者を呼んできてくれた。
「ご気分はどうですか?」
「特に何も。私はどうなったのでしょうか」
「過労ですね。2,3日休んで問題なかったら退院にしましょう」
マスターは医者を見送り、ベッドに横になって考えた。
(やっぱり続けるのは無理なのだろう。どんなに頑張っても、年齢には勝てなない。ここまでなのだろうな)
「あの……、マスター?」
カーテンの向こうから、おずおずと声がした。
「はい。どうぞ」
カーテンをゆっくりとひかれると、そこにはあの若人ユウヤが花束を持って立っていた。
「大丈夫ですか?久しぶりに店に行ったら、入院して休業っていう張り紙がしてあったから」
「心配してくれてありがとう。過労だって。最近、忙しかったから」
ユウヤはベッド脇にあった椅子に座った。何も言わないで、俯いている。マスターはその様子を見て、店が続くことを心配しているのだと思った。
「店はできる限り続けるから、安心して」
12年後までと約束できないのが心苦しかった。
ユウヤは意を決したように顔を上げると、マスターにお願いした。
「あの、僕を雇ってもらえませんか?」
(クラウドファンディングや、最近の売上でだいぶお金に余裕がある。彼を雇っても資金が枯渇することはない。最悪、メガさんに頼んで宣伝してもらえばいい。そして、ゆくゆくは彼を後継者にすれば、12年後まで店を持たせられる)
マスターは頷いた。
「君が良ければ、いつからでも来なさい」
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