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6.身代金要求
及川警部が麻美を連れて戻って来た。麻美がエリの隣に座る。俯きがちだった麻美の顔にようやく落ち着きが戻ったようであった。部屋に居る全員がテーブルを囲み、テーブルに置かれた受話器を黙って見つめていた。
13時過ぎ、家政婦の佳代が封筒を持って転がり込むように入って来た。
「旦那さま~、こんな物が!」
佳代が封筒を谷崎に渡そうとしたところを及川警部が制した。
「谷崎さん、危険回避も兼ねて代わりに開封させて頂きます。」
「わかりました、お願いします。」と谷崎。
封筒も手紙も全て定規を当てて書いた文字だった。一目で普通の封筒ではないことがわかる。
『明日の午後3時。五千万円を用意し大阪駅前の沢渡ビルの屋上で待て。寮で娘と同室の同級生二名だけ屋上に待機せよ。警察が介入しない限り娘の命は保証する。』
及川が読みあげた手紙の内容はこれで終わっていた。手紙の内容に顔を見合わせるエリと麻美。彼女達の不安をよそに、
「すぐに指紋を調べてくれ。これに触った家政婦さんも協力をお願いします。」と及川警部は部下に指示をしてから、
「今度は手紙か...」と呟いた。
谷崎はエリ達二人に向かって頭を下げながら言った。
「すまないが、君達はこのまま明日までこの家に残ってくれないだろうか。警部さん、構いませんよね。」
「それは構いませんが。」と及川警部。
「学校には連絡しておいて欲しい。それから佳代さん、部屋の準備を頼む。」
谷崎はそう指示すると、及川警部と身代金の段取りについて打ち合わせを始めた。
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