1.灰色の通学路

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1.灰色の通学路

「一日を通して曇りがちでしょう」  そんな天気予報にどこかほっとする月曜日の朝。  電気ケトルが沸騰する音に対抗するように、声高に母が言う。  「週末、ショッピングに行かない? せっかく私服の高校に入ったのに、毎日上から下まで黒一色なんて……。気分転換にもなるかもよ?」 「楽だしこのままでいい」話が拗れる前に家を出る。  中学校に入って程なく、クラス中から突然無視され不登校になった娘を心配する母の気持ちは分かる。  でもリセットできた。  中学には1ヶ月弱しか通わなかったけれど、暗い過去や同級生達から距離を置くため遠方の高校を選んだ。  長距離通学は少し大変だけど、ちゃんと通えている。  学業に集中できているのだから十分だ。  友達だの青春だのといった彩りはいらない。  無視されるくらいなら、初めから関わらなければいいだけ。  何も言わない、何も感じない。  黒を纏って影になる。  黒色は何色にも侵されないからーー  そう思っていたのに……   高校に入学してまだ2週目だったのに……
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