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【21時30時】
2台の車が栄行タクシーの事務所兼タクシー置き場に到着する。
「どうするんですか?班長」
丹波は真田に聞く。
「とりあえず俺の自家用車を貸してやるから今日はそれで営業に行って来い。もうこの時間は社長も事務所に居ないからバレないだろ」真田は自分の駐車場に止めてある青いミニクーパーを指差す。
「えっ??自家用車?」
丹波の頭は思考停止した。
「仕方ないだろ、今は他に空いてる営業車がないんだからよ」
真田が強引に諭すと丹波はしぶしぶ同意した。
「その間に今からお前の車を修理屋に持って行って修理しておいてもらおう。まぁ既に夜だけど何とか形だけでも徹夜で直して貰って、明日社長が来るまでに事務所に戻しておけばいいだろ」真田はムチャな修理プランを得意気に話す。
次に真田はスマホを取り出しいつもの修理屋に電話を掛ける。
電話でのやり取りは暫く続いたが真田は電話を切ると「こんな時間からどうにもならないと言ってたが直接車を持って行って何とかさせよう」
そう言い終わると、丹波に再び故障した車を運転させ真田はミニクーパーに乗り2台で修理屋へ向かう。
修理屋を叩き起こす形で丹波の車を無理矢理預けると2人でミニクーパーに乗り事務所のタクシー置き場へ戻る。
その車内で丹波は「ほとんど泣いてましたねあの修理屋の人……ちゃんと直してくれますかね?」と心配そうに聞いてくる。
そして再び事務所に到着すると真田は丹波に自分の愛車の鍵を渡す。「いいか?頼むからこの車だけは絶対ぶつけるなよ!」と念を押した。
そして真田は丹波がタクシー置き場からミニクーパーに乗って出発するのを見送ると、やっと自分のタクシー車両に乗り込んで営業に戻った。
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