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【4月7日15時35分】
株式会社栄行タクシーの事務所があるタクシー置き場に1人の男が立っていた。
髪は少し跳ねさせ栄行タクシーの制服を着ているがネクタイもだらしなく締まりがない。しかしそれでいて不潔な印象はない。
彼の名は真田明。
本日からタクシー業務に出る新人の現場研修を済ませたった今送り出した班長運転手だ。
小さくあくびをした後両手を組んで軽く背伸びをすると、真田は自分のタクシー車両の鍵を取りに事務所へ向かう。
事務所の扉を開けて中へ入ると鍵が掛けてある棚に目を向ける。
真田はそこから最後の1つとなっている自分の車の鍵をひょいっと掬い上げると、真田が入って来た事に気付いた奥にいる社長が声を掛けてきた。
「真田、ちょっとこっちに来てくれ」
不意に呼び止められた真田は「(また何か悪事がバレたのか?)」と心配な気持ちを隠しながら、ゴソゴソと書類を片付ける社長がいるスペースに近付く。
すると社長は、「近い内にこれで何人か連れて一條くんの歓迎会をしておいてやってくれ」
そう言うと真田に白い封筒を差し出した。
真田は封筒を膨らませ中を覗いて見ると5万円が入っていた。
「おおおおお!社長!ありがとうございます!」
真田は社長の気が変わらない内に封筒を自分の制服の内ポケットにしまう。
そして「では本日も安全運転で行って参ります!社長!」
調子良く言うと事務所から出て扉を閉めた。
事務所から出た真田は1台のタクシー車両の前に立つ。
営業車両を示す緑色のナンバーに平仮名は「さ」。4桁の番号は7716と書かれてあるそのタクシー車両に鍵を差してドアを開く
真田は運転席に乗り込みシートベルトを締める。
キーをオンにするとエンジンが掛かる。
アクセルを踏んで真田の車が事務所から出て行った。
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