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「水上咲良、結構ヤバいらしいのよ」
「そうなの?」
私は口元に手を当て、テーブルの上に少し乗り出し、大樹に顔を近づけて、小声で続けた。
「どうやら、知り合いに片っ端から電話を掛けて、金をせびっているんだって」
「ふーん」
やはり水上咲良についての反応は、鈍い。
「ふーん、ってそれだけ?」
「この歳になって昔の知人の噂話っていうのもなあ」
「嘘言いなさいよ、気になるくせに」
大樹の本心を知りたくて、追い打ちをかける。もちろんさらに一押しする。
「だってあんた、卒業式の日に彼女に告白してフラれたんでしょう」
(続く)
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